「風評被害はない。むしろ、畜産農家を応援したいというお客さんが多いですね」
宮崎県で感染が拡大する口蹄疫(こうていえき)の県内への影響を取材したとき、スーパーの担当者はこう言った。発生源周辺の農家は全頭処分が決定され、経営の先行きを不安視していると聞く。消費者からは、農家を「応援」しようと、宮崎産を積極的に扱うように求める声があるという。
一方で、この担当者は、マスコミによる報道が「風評被害につながりかねない。大々的に報じないでほしい」とも話した。確かにそういう声を、他でも耳にすることはある。しかし、実際に起こっていることを詳しく知ることができなかったために、被害が大きくなるということもありうるだろう。
記事のとらえ方の違いを改めて考えさせられる取材だった。今、発生していることを見聞きして伝える報道。読み手が記事で何を思うか--。なお一層考えたい。【渡辺諒】
毎日新聞 2010年5月21日 地方版