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宮崎・口蹄疫:全頭処分 4町苦渋 生産農家に重い方針

 宮崎県の口蹄疫(こうていえき)問題で、感染が広がっている地域の牛や豚が全頭処分されることが19日、決まった。処分完了まで間のまん延を防ぐためワクチンを接種したうえでの処分となる。感染封じ込めに向けた政府の決断だが、対象の畜産農家や地元には大打撃だ。都農町、川南町など処分対象地域となった4町の首長らは国からの決定通知に一様に苦渋の表情を浮かべた。【木元六男、小原擁、澤本麻里子、川上珠実】

 高鍋町に政府から方針を通知するファクスが届いたのは同日午後。対策本部の男性職員は「町内全農家の同意を取らないといけないぐらいの重い方針だと考えているのにファクス一枚とは……。農家にどう説明したらいいのか」と頭を抱えた。

 同町の小沢浩一町長は「埋却場所として買い取ると言った土地の値切り交渉の電話が国からあった。これが万全の対策なのか」と憤慨。「農家への補償が一番重要。長期間にわたる補償を約束してくれないと理解は得られないだろう」と厳しい表情を崩さなかった。また、川南町の内野宮正英町長は「1軒でも多く残そうとしてきた努力は何だったのか。農家の方の気持ちを考えるとせつない」とため息をついた。

 畜産農家の反応も複雑だ。発生農場から10キロ圏内で処分対象地域の川南町で、飼育する牛76頭に感染疑いが出た江藤民子さん(65)は「感染していない農家は簡単には受け入れないだろう」と全頭処分には反対する。一方、都農(つの)町で牛40頭を飼育する永友浄さん(65)方は感染を免れているが、全頭処分の対象に。「ゼロからスタートした方がいい。初動態勢が遅すぎたから、感染がここまで広がった」と行政の対応を悔やんだ。

 自治体として肉用牛や豚の産出額全国一の畜産地で、感染が出ていない都城市で和牛約400頭を飼育する迫間輝昭さん(62)は「農家にはつらいことだが、国がその後の手当てをきちんとやれるかどうかだ。仮に都城で発生した場合は覚悟している。これ以上、他県に迷惑はかけられない。宮崎県内で封じ込めないといけない」と話した。

 一方、感染が確認された地域だが今回の決定で処分対象にならなかったえびの市で豚3000頭を飼育する宝尺実正さん(53)は「市内でこれ以上感染疑いが確認されたら、その時はワクチンを打たないといけない。感染が出ていない地域の仲間に同じ思いをさせたくない」と話した。

■同情と警戒 隣接県の生産者ら

 口蹄疫の感染封じ込めに向け国が宮崎県の多発地域を対象に打ち出した「10キロ圏内全頭処分」。九州の隣接県などの生産者らの声には宮崎の対象農家への同情とともに、県境を越えての感染拡大への警戒感がにじんだ。

 鹿児島県鹿屋市で乳牛140頭を飼う柿元博志さん(58)は「農家の心情を思うと心が痛むが、感染の広がりを考えるとやむを得ない」と受け止める。「殺処分後の埋却が進んでいないのが問題。ワクチン接種後の埋却を短時間で終わらせることができるかがカギだ」と指摘した。

 「手塩に掛けた家畜をすべて失う農家の苦痛を思うと、たまらない気分だ」という大分県玖珠町の肥育農家、重見宝弘(とみひろ)さん(36)は「飼料の運送ルートなど畜産圏を考えれば、県境などないようなもの」といい「大分ではたまたま発生していないが、行政の後手後手の対応には不満と不安を感じる」と話した。

 宮崎県えびの市の発生農場から20キロ圏内の搬出制限区域内にある熊本県錦町の白石昭四郎・球磨畜産農協組合長は「とにかく早く終息させたいという思いは皆同じと思う」と思いやった。管内は700戸余りで牛5600頭を飼育。「感染を避けるため、互いに接触を減らして行き来もなくした」と話した。

 一方、宮崎県内から子牛が供給される佐賀県。唐津市の肥育農家の60代男性は「素牛の5割近くを宮崎から仕入れたこともあり、宮崎県の畜産農家は大変な心痛だと思う」と同情を寄せた。

2010年5月20日

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