その観点から微妙なのは、特定の企業クライアントへの特別な値引きです。公的資金を受ける以前からの企業クライアントへのサービスの継続ならともかく、既存の企業クライアントをつなぎ止めるための更なる値引きや、新たな値引きによる新規の企業クライアントの開拓などは控えさせるべきです。
その理由は簡単です。公的資金の原資は国民の税金だからです。国民の税金が投入されている企業が値引きなどのサービスを提供する場合、そのサービスは極力すべての国民に裨益(ひえき)するものであるべきではないでしょうか。
盛和塾への割引特典の非常識
そして、今回批判の対象となった盛和塾への割引特典の提供は、政策論の観点もさることながらモラルの観点からも論外だったと言わざるを得ません。
本稿が読者の皆様の目に触れる時点で、JALはこの優遇サービスの撤回を明らかにしているかもしれませんが、その内容をここで改めてお伝えしておきたいと思います。
盛和塾とは、JALの稲盛会長が以前から運営する私塾ですが、そこの5500人の塾生が「盛和塾 JALを支援する55万人有志の会」を発足させました。塾生一人が知り合い100人を紹介することで、55万人でJALを支援しようというのです。
問題は、JALが提供するサービスなのです。塾生に対して空港ラウンジ利用クーポン30枚の配布、JALのツアーの8%割引などの特典は既に報道されていますが、それよりも問題なのは、塾生と紹介された人がJALのマイレージカードの会員になると“サファイアカード”をもらえるということでした。
JALのマイレージカードは4種類あるのですが、ランク的に下から2番目に位置するこのカードを持っていれば、JAL便に搭乗すると区間マイルの2倍のマイルを獲得できるなど様々なメリットを享受できます。つまり、無料航空券などの特典を獲得しやすくなるのです。
そして、一般の利用者がこのサファイアカードを入手しようとしたら、JAL便に5万マイル分も搭乗しないといけないことに留意すべきです。そうしたカードを、特定集団の5500人とその知り合い100人に無条件で提供するというのは、かなり強烈な値引き・特典サービスであると同時に、かなりひどい差別と言えるのではないでしょうか。