JALを支援しようと考えているのは、盛和塾の塾生とその知り合いの合計55万に止まらないはずです。たくさんの一般個人の方、名もない多くの方が同じ気持ちでJALを使っているはずです。でも、そういう普通の人は5万マイル分搭乗しないとサファイアカードはもらえないし、区間マイルの2倍のマイルも獲得できないのです。
そう考えると、盛和塾の塾生とその知り合いに対し与えられようとしていた割引特典が、いかにJALを支援しようと考えている不特定多数の一般個人を裏切っていかをご理解いただけるのではないでしょうか。これほどの裏切りと差別はありません。非常識の域に達しています。JALが裏切った一般個人の人たちが払っている税金がJALに投入された公的資金の原資なのです。JALを支援しようと思って搭乗していた方々は怒るべきです。
ついでに言えば、現在サファイアカードを持っている人も怒るべきです。航空業界に詳しい人の推測によると、サファイアカードを持つ会員の数はだいたい十数万人のようです。それが本当だとすると、その5倍近い量のサファイアカードがばらまかれるのです。民主党のバラマキ政策も真っ青のバラマキです。苦労して5万マイル分搭乗してやっと獲得したものが、このように安易にばらまかれるというのは、現行会員への裏切りでもあります。
ちなみに、JALの役員が盛和塾の塾生に宛てた挨拶状が手元にありますが、そこには以下のように記されています。
“日本航空が生まれ変わるためには、塾長(筆者注:稲盛会長を指す)と同じ意識と目線をお持ちである塾生の皆様からご意見を頂き、弊社サービスに反映させていくことが、非常に大切だと深く感じております。そのためには、一人でも多くの塾生ならびに関係者の方々に、まずはJALグループのサービスをご利用いただくことが第一歩と考え、盛和塾塾生の皆様、関係者、ご紹介者様へのプログラムを今般作成させていただきました。”
この文章を読むと、JALの体質は何も変わっていないと思わざるを得ません。再生に当たって、稲盛会長の周辺にいる関係者の意見しか聞く気はないと言っているも同然です。
前原大臣の常識が問われる
報道によると、前原国交大臣は会見で「調査して21日までに報告する」と発言しています。その通りならば、今日にはこの問題についての国交省としての見解が出されるはずですが、そこでどういう判断をするかで、国交省と前原大臣の常識の度合いも分かるのではないでしょうか。それとも、一部の報道で伝えられたように、盛和塾からのサービス返上の申し出を受けて、JALが自主撤回したという格好でうやむやにするのでしょうか。
常識があるなら、このような盛和塾への特典は即刻止めさせるはずでした。公的資金の原資である税金を払っている国民、JALを支援してきたたくさんの人、現在サファイアカードを持つ会員、と多くの人に対するJALの裏切り、非常識だからです。
逆に、そうした措置を取らなかったら、所詮国交省や前原大臣はJALを守りたいだけなんだと判断せざるを得ないと思います。
*本稿は、JALが盛和塾の申し出を受けて同塾会員への優遇サービスを撤回することを前原大臣が明らかにした5月21日の閣議後会見の前に執筆されたものです。