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所長
神浦元彰
軍事ジャーナリスト
Director
Kamiura Motoaki
Military Analyst

English Column of This Month!VOICE OF Mr.KAMIURA

Re:メールにお返事

日本や世界で現在進行形の最新の軍事情報を選別して、誰にでもわかるような文章で解説します。ホットな事件や紛争の背景や、将来の展開を予測したり、その問題の重要性を指摘します。J-rcomでは、日本で最も熱い軍事情報の発信基地にしたいと頑張ります。(1999年11月)

2010.05.21

 共同調査団のスエーデンが魚雷説に同意していない? 

届いたメール
神浦さん、こんにちは。
毎日興味深く読ませて貰っています。

天安沈没原因についての韓国政府の発表にスウェーデンの調査員が同意していないという報道があるんですが、本当でしょうか。

元記事だというCBSの記事がリンクされていないし、続報もないし、マユツバなのかなあと思ったりもするんですが。

http://www.seoprise.com/board/view.php?uid=148898&table=seoprise_12
大部分の外信記者が韓国政府側の流した内容に準じて発表してる中、CBSニュースはとても重要な事実の一つを記事の中に組み入れている。

これは、韓国の新聞や大部分の外信では見ることがなく、また見過ごされやすいが、大変重要な事実のひとつだ。

世界各国の調査団が今回の天安号の分析のため、調査団を派遣したことはご存知だろう、韓国政府側の現在までの発表を見れば、北韓の魚雷によって天安号が真っ二つになったという結論にあって、これを客観化させるために、すべての外国調査団が北韓の魚雷が原因という結論に同意したと主張しているようだが、必ずしもそうではないようだ。

今回のCBS記事中間あたりを見れば、調査団に合流した米国・英国・豪州は韓国の発表に同意したが(… all prepared to back up the findings…)、共に調査団を派遣したスウェーデンは北韓の魚雷がその原因という結論に同意しないようだ(Only Sweden, which also sent investigators, is a reluctant partner in blaming the North Koreans)。
コメント
先ほど、在京テレビ局で哨戒艦の破断面の映像を詳細に見てきました。それで気がついたのは、哨戒艦の沈没原因が魚雷の命中ではないということです。

今回の韓国軍の発表でも、重大な箇所の説明が抜けているように思います。

哨戒艦の船体が水中爆発によって生じたバブルジェットで、胴体が真っ二つに折れて沈没したのはその通りです。

しかしこれは最初からバブルジェットで狙ったわけではなく、音響ホーミング魚雷が哨戒艦に命中せず、はずれて艦の近くを通過した時、水中の魚雷が磁気を感じて爆発したようです。

その爆発で、バブルジェットが発生したようでした。

すなわち、魚雷は推進中に敵が気がついてエンジンやスクリューを停止させ、艦の音響をストップした場合に、艦の近くを通過した際にも磁気で爆発する起爆システムがセットされていたようです。

魚雷は、機雷や爆雷のように、最初からバブルジェットを発生させるための性能にはなっていません。あくまで艦に命中したほうが、より大きな損傷を敵艦に与えることができます。

すなわち北朝鮮は最初から意図的に魚雷のバブルジェットで攻撃したのではないということです。

このあたりの説明で、調査団の中でも意思統一が乱れたような気がします。

このことは引き上げた哨戒艦の破断面を詳しく見てわかったことです。北朝鮮の魚雷は命中しないで、近くを通過した時、磁気に感応して爆発したのです。

まあ、沈没したことに間違い有りませんが、魚雷の命中による沈没か、外れたために磁気を感じて爆発したものでは、心臓を刺して殺したのか、心臓を刺すつもりが腹を刺して殺したの違いがあります。

魚雷のスクリューとモーター部分が、原型に近い形で回収されたのがその証明です。魚雷の爆発(250キロ炸薬)はHEAT(成形炸薬)ですから、火薬ガスの大部分は前方に抜け、魚雷後部のスクリューとモーターが原型に近い形で残ったのです。
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