コンピュータは創造力を刺激する 奥一穂さんのエンジニアライフ(2/2)
――現在はサイボウズ・ラボにいらっしゃいますが、最近の興味はどこにありますか?
奥 クラウドと言ったらいいんですかね。クラウドコンピューティングは新しいものみたいに言われていますが、基本的には従来あった手法の組み合わせを複数台に適用していけばいいということが多い。
従来の研究者はP2Pをやってきた人が多いからだと思いますが、Webアプリをやっている自分とは見え方が違っている。そもそも気にすることない問題を考えていたりしていて、自分達が本当に必要なトランザクションやレンジクエリなどがなかったりします。
一昨年ほど前からMySQLをはじめたんですが、MySQLベースのメッセージキューを作りました。今はミクシィやライブドアが使ってくれているんですが、この4月に米国のMySQLカンファレンスで講演してきました。
――奥さんのことをスマートだと評する人が多いですね。ご自身で意識して何かやっていることはありますか?
奥 そのように言ってくれる人がいるのは自分でも知っていて、とてもありがたいと思います。自分には専門といえるホームグラウンドがないから、いろんな分野をみて、そこでの知識と経験を別の分野に適用しているだけなんですけどね。
例えば、クラウドにしてもそれぞれのテーマでは専門でやっている人の方がもっとよくできたりするはずです。自分は、広く浅くにすぎません。
ただ、昔のものをあさるのは好きですね。いまITの世界でやられていることは、昔からあるものの形を変えて適用しているだけだったりします。そういう点で、知識や経験が占める割合というのは大きいと思うんです。
――趣味はバイオリンなんですね。休日に演奏されたりするんですか?
奥 最近はほとんどやってないですね。家族は京都にいて単身赴任状態なので、ほとんど弾く機会がなくて。
週末は京都に帰って子供と遊んだりすることが多いんですが、実家の方にはお世話になりっぱなしで、悪いなあという感じです(笑)
――今後はどういう方向へ進もうと思われていますか?
奥 今後もエンジニアでやってきたいと思っています。35歳定年説とか言われますが、プログラミングはやっぱり経験がものをいうと思う。これまでよりも引き出しは増えているし、間違えることもなくなっている。発想のクオリティも上がってきています。
そういえば「自分は本当にエンジニアだな」とつくづく思ったことがあるんですが、自分は請求書を書くのが嫌いなんです。請求書を書くのって、工夫のしようがないというか、創造性を発揮できない。
工夫のしがいがあるコンピュータの仕事って本当に面白い。人とコミュニケーションして、いろいろと調整する必要もないから、自分が考えたことをダイレクトに試すこともできる。簡単にコピーできるからスケールもする。もしこれが都市計画や建築だったら、一生をかけて何個手がけられるかという世界だった。好きなことと仕事が一致したので、エンジニアを楽しんでいきたいですね。