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口蹄疫風評被害を懸念 飲食店ピリピリ

2010年05月21日

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焼き肉店の看板となっている宮崎牛の像=つくば市

 宮崎県での家畜の伝染病「口蹄疫(こう・てい・えき)」の広がりに、県内の焼き肉店やレストランがピリピリしている。感染がさらに拡大すれば、肉全体への不信が高まり、消費者の買い控えにつながりかねないからだ。県などは、感染した肉は市場に出回らないことなど、消費者が安心できる正しい情報を伝えることに腐心している。(栗田有宏、津布楽洋一)

 水戸市内で30年、ステーキなど常陸牛を中心とした肉料理を扱う「レストランイイジマ」は、口蹄疫の感染が発覚した後、宮崎県産を含む九州産の牛肉は取り扱っていない。

 ただ、全国各地の「和牛」を使った比較的低価格のメニューに、「宮崎産ではないよね」「できれば宮崎産は食べたくない」と尋ねてくる客もいたという。

 幹部は「まだ風評被害というほどではないが、消費者は食の安全、安心には非常に敏感になっている。感染がもっと広がれば宮崎牛だけでなく、牛肉全体の消費離れにもなりかねない」と懸念。「口蹄疫に感染している牛肉は市場に出回っていないということを、もっと広く知ってもらう必要がある」と訴える。

 水戸市中心部の常陸牛ステーキ店のオーナーも「(同じ)牛肉なのでイメージ的に悪いという気持ちはある。(口蹄疫発生後)客足がいくらか遠のいているような気がする」。

 例年、散財した後の連休明けは客足が遠のくが、それを差し引いても1、2割は減っているという。「動きが悪い。(口蹄疫の)影響があるのかなと思う」

 県畜産課はホームページで、生産者に対する発生予防のための留意点などとともに、消費者向けに「人に感染しない」「感染牛の肉や乳を飲食しても人体に影響はない」などの情報を紹介している。

 ただ、担当者は「県が風評被害対策の情報を積極的に発信すると、『茨城県産だけは大丈夫』というメッセージになり、逆に宮崎県産を風評被害に陥れることになりかねない」とし、同じ畜産県への配慮をみせる。

 宮崎牛を使っているつくば市の焼き肉店「炙(あぶ)りや 秀苑」では、口蹄疫の報道が増えたこの数日、客が3割程度、少なくなったという。

 だが仕入れ先を変えるつもりはない。移動制限区域外にあるこの生産者とは、長年のつきあいがあり、贈られた「チャンピオン牛」の像は店の看板。現場の苦労も、宮崎牛の素晴らしさもよく分かっているからだ。

 上田征英社長は「飲食店で口蹄疫の牛が出回ることは、間違ってもない。(今回の騒動で)宮崎牛が日本全国の銘柄牛のルーツであることが分かっていただけたと思う。風評被害が去ったあとに、ピンチをチャンスに変えられれば」と話す。

 県常陸牛振興協会によると、今のところ、販売指定店などで大きな変化は聞いていないという。ただ、不況の影響で高級牛肉の売れ行きが例年の7割程度。今後、口蹄疫はダブルパンチにつながるだけに「早く終息することを願う」と気にかけている。

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