「事業仕分け第2弾」の前半では、独立行政法人や各省の改革への消極姿勢が浮かび上がった。独法改革は自公政権下でも各省の激しい抵抗で骨抜きにされた歴史があり、仕分け結果を着実に反映できるかが今後の焦点。各省の政務三役にも各省に理解を示す向きもあり、統廃合を含めた独法改革を内閣として実行できるかが問われる。一方、「埋蔵金」の発掘はあったが、恒常的な歳出削減効果は「数百億円」との見込みを実証する結果になった。【谷川貴史、三沢耕平、寺田剛】
「前政権の『廃止』という分かりやすい閣議決定がなぜ止まったのですか?」(蓮舫参院議員)。「『他法人と統合』の閣議決定を知ってますか?」(尾立源幸参院議員)
仕分けの現場では、自民党政権下の07年12月に閣議決定された独法の整理合理化計画が実行されていないとの追及が相次いだが、法人からの明確な説明はなかった。
計画は、全101法人(当時)を統廃合などで85に減らし、222事業を見直すもの。ただ、都市再生機構を「5年後に株式会社化」との原案が「3年後に結論」と先送りされるなど、当時の渡辺喜美行革担当相に各省が激しく抵抗した。
鳩山政権は昨年12月に計画を凍結し、ゼロベースで独法改革をやり直すと閣議決定。仕分けはその手段だが、各省は抵抗の構えをみせる。経営目標や根拠となる数値を用意しなかった法人が多く蓮舫氏が「(改革の)姿勢が見えない」と声を荒らげる場面もあった。
従来の改革と仕分けの最大の違いは、攻防戦が公開の場で行われたことだ。枝野幸男行政刷新担当相は23日の開会式で「仕分けは国民に代わって無駄をそぎ落とす試み。納税者の皆さんは『おかしいぞ』という時は私たちを後押しいただきたい」とあいさつ。納税者を味方に改革を進める手法だ。
ただ、官僚組織に切り込む役割の政務三役の消極姿勢も目立った。万博跡地が問題になった際、譲渡に難色を示す大串博志財務政務官に、枝野氏が「理屈にならない」と一喝する場面もあり、枝野氏は28日の会見で「どういう結論でも、内閣全体で決めれば政務三役は行動していただける」とけん制した。
判定では効率性の視点が薄い独法に「ガバナンス(運営能力)強化」を求める判定が相次いだが、普天間移設問題で迷走する鳩山政権も統治能力不足を指摘されている。みんなの党の渡辺喜美代表は28日の記者会見で「まるでガバナンスがきいてない民主党自体が仕分けられた方がいい」と皮肉った。
「埋蔵金レベルでは大きなものが出てきた。11年度予算に生かしたい」。枝野氏は28日の記者会見で、一定の財源捻出(ねんしゅつ)効果があったと強調した。枝野氏が指摘する埋蔵金とは、独法の「不要資産」のことで、「国庫返納」判定は16件。目玉は「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」が行う国鉄清算業務での利益剰余金で、1兆3500億円(08年度末)に上る。
ただ、剰余金は旧国鉄職員の年金運用で損失が出た場合などの備えで、返納額の算出には関係機関の調整が必要。金額がどこまで積み上がるかは不明だ。仮に大部分を返納できても1回限りで、恒久財源にはならない。
「廃止」判定は34事業に上ったが、独自財源などで賄っているケースも多く、「国の予算削減効果は1000億円に届くのも大変」(仕分け関係者)というのが実態だ。初日の仕分けで廃止判定となった「住宅金融支援機構」の住宅資金貸し付け2事業(10年度で計約8000億円)は、機構自身による債券発行などが原資。「廃止しても国庫への返納額はせいぜい100億円程度」(国交省関係者)で、廃止事業からの財源捻出効果も限られる。
民主党は昨年の衆院選で16・8兆円の新規施策を掲げ、うち9・1兆円を予算の無駄削減や組み替えで捻出するとした。しかし、10年度予算編成で削減できたのは概算要求段階も含めて2・3兆円どまり。公約実現にはさらに7兆円近い削減が必要になるが、今回の仕分けを経ても道筋は見えない。野党などから「財源なきバラマキ政策」との批判が続きそうだ。
毎日新聞 2010年4月29日 東京朝刊