さらに価格の大きな部分を占めるのも電池であり、それをレンタル品にせざるをえないならば、いっそのこと電気自動車全体をレンタル品にした方がいい。
パリで人気の貸自転車「ヴェリブ」のように、何台かの電気自動車が止まったステーションがそこら中にあり、ユーザーはそこから電子カードで借りて目的地のステーションでどこでもいいから乗り捨てる。帰りはまた手近で借りるという具合だ。そしてその利用料だけを払う。ステーションではいつも充電設備につながれ、残り電力は常にネットワーク監視され、スマートグリッド(賢い電力網)の中で発電ロスを無くすための分散電力バンクとしても機能する。電気自動車という機械は、単なる交通手段を超え、むしろそういう新時代の社会システムにこそふさわしい。
携帯電話が「通信」というサービスを提供するネットワーク端末であるように、「移動」というサービスを提供するネットワーク端末が電気自動車--自動車を単体で所有する意識を捨てるべき時代が近づいているのである。=毎週日曜日に掲載
毎日新聞 2010年4月18日 東京朝刊