「「あ・・・」」
学校からの帰り道、アリサとすずかと別れて・・・なのはとハルカとオレの三人になった時。
二人が突然立ち止まった。
「どうした?」
一歩遅れて立ち止まり、二人に問う。
「これって・・・高町さん」
「うん、多分」
二人が顔を見合せながら頷き合う。
「仲間外れか・・・」
この二人だから、魔法関係で何かを感じているのだろう。
オレには全くわからない。
うん・・・寂しい・・・。
こういう時に『相棒』が居てくれれば・・・『相棒』って誰だ?。
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二人が感じた何かはやっぱりジュエルードらしく、オレは二人に導かれるままに走り出した。
ユーノも現場で合流するようだ。
(・・・・・)
ジュエルシードが発動したのは小山の上の神社だった。
左右を林に挟まれた長い石段を駆けあがる途中、オレは思い出す。
親父がオレを見付けたのは、ここの森の中らしい。
なんでも親父が酔っぱらって、森の中に入ったところ・・・たまたまオレを見付けたようだ。
その時に倒れるオレを思い切り踏みつけたらしく、ひょっとしてオレの記憶喪失は親父のせいでないかと疑っている。
この話を笑いながらされたオレは、このおっさん富士の樹海にピクニックに行ってくれないかなと切に願った。
「甲斐くん!!」
そんな事を思い出し、1人で苦笑いを浮かべていると、後ろを走るハルカに呼ばれた。
「なに!?」
足を止めて振り向く。
「おんぶ!!」
「帰れ!!」
一応、危ない所に向かってるわけだからさ!本気で帰って!!。
「だって、甲斐くんの事心配だし」
「お前が一番危険だけどな・・・」
心配してくれるのは嬉しいけど、ファイズの力が有るオレや、魔法が有るなのはとユーノと違い、ハルカには自衛の手段が無いので一番不安だ。
「二人共、先に行くよ!」
「ああ!今行く」
先を行くなのはに叫び、再び走りだすが・・・。
「危険なのは、みんな一緒だよね」
後ろ手を掴まれた。
「いきなり何だよ・・・」
立ち止まり、オレの手を掴んで止めるハルカに向き直る。
「高町さんやスクライアくんに、任せれば良いんじゃないかな?」
「そして、オレは帰れと?」
「そうだよ、私達・・・違う・・・甲斐くんが戦う理由は無いよ。月村さんの時とは違う、今の甲斐くんにはそういう選択肢が有る」
ハルカがオレを見る、今までに見たこと無いような・・・凄く真剣な眼で。
すずかの時は、戦わなければ死んでいたかもしれない・・・オレしかあの場に戦う者が居なかったから・・・戦った。
今回は違う、なのはとユーノが居る、率先して事態を収めようとする人が居て・・・オレは戦わない選択肢を選べる。
「でもな、オレが戦わなくて。それでなのはやユーノが怪我とかしたらどうすんだよ」
それも、理由を知ってて・・・どうにかできる力が有ってだ。
それは・・・オレからすれば見殺しだ。
もし、なのはやユーノがどうにかなったら・・・オレは絶対に後悔する。
だから、オレは自分のためにここに来た。
ユーノのためでも、なのはのためでも無い、オレ自身が満足するために。
誰にも縛られず、自分の意思でだ。
「自分が怪我したらどうするの?」
「それは・・・」
関わらなければ、オレは無傷だ・・・代わりになのはが怪我をする確立が高まる。
関われば、オレが怪我をするかもしれない・・・代わりになのはが怪我をする確立が下がる。
「私は・・・本音を言えば、友達より家族を取るよ。甲斐くんが大切な家族だから、怪我とかしてほしくない」
ハルカの中で、なのはとオレを比べたら・・・オレの方が大切らしい。
それは・・・まぁ、正直嬉しい。
「私は、戦ってほしくない。今からでも前のような生活に戻ってほしい。普通の生活に」
ファイズとか、魔法とか、そういうのとは関係無い・・・少し前までと同じ、ただただ幸せな生活。
「楽しいし、安全だな」
「そうだよ、今みたいなことや・・・物騒なことも無い。今なら、まだ帰れるよ」
ハルカが手を離し、オレに差し出した。
「平和・・・ね」
その手を見る。
この手を掴めば、ハルカの言う・・・普通の生活に戻れる。
その逆は戦いで・・・選ぶのは・・・きっとバカだ。
わざわざ危険な所に自分から飛び込んで、それで怪我して・・・最悪死んだら一生の笑い者だろう。
そして、コイツは間違いなく悲しんでくれる。
オレの選択は、戦うか平和の二つ。
「悪い、オレ・・・バカなんだ」
「バカじゃない・・・大馬鹿よ」
ハルカが手を下げ、罵る。
オレも・・・なのはの事を言えないな・・・。
「知ってしまったから、見て見ぬフリはできないから・・・。後悔したくないから」
そんな自己満足のために、オレはコイツを・・・家族を心配させる、悲しませる。
「だから・・・危険な事に足を突っ込むの?。たったそれだけの理由で?お人よしのレベルとしては、地雷原に目隠しして突っ込むのと同じレベルだよ」
「それでも後悔したくないんだ。・・・・ハルカの言う選択肢は選べない、オレは・・・自分をねじ曲げた世界で・・・夢は作れないと思うから」
オレには・・・夢が無い、やりたい事も見付からない。
ただ・・・今を守りたい、そんな望みしかない。
この前アリサとすずかに食いかかったのだって、羨ましいという気持ちが何割か有ったからだ。
だから、だからこそ・・・夢もなにも無い段階で・・・自分を曲げたくない。
今、オレが自分の望みさえ捨ててしまったら・・・きっと何も残らない。
「夢も、やりたい事も、未来も、何も決めてないのに・・・自分を偽るなんてできない」
偽りの自分で決めた夢は・・・きっと偽りの夢で、いつか・・・崩れる。
最初に思う夢を・・・偽りで固めたくない。
「だから、オレは踏み込む。魔法の世界に」
自分を崩さないために、オレはハルカの手を掴まない。
それだけの、何度も言うけど・・・『今を守りたい』それだけのために・・・オレは行く。
「私は・・・それを正しい選択だとは認めない。むしろ大嫌い。
自己満足で、自分のことがどうなっても良いから・・・自分を貫こうとする考えは・・・本物のバカな考えだと思うから」
「ああ、だから・・・オレは謝らない」
バカな考えでも、オレはオレだから・・・甲斐セツナだからその選択を選ぶ。
オレがそう決めたから、そう選んだから。
「甲斐セツナは大馬鹿だ、甲斐セツナは大馬鹿だ」
ハルカが俯きながら言う。
「二回言うなよ・・・」
「甲斐セツナは大馬鹿だ、甲斐セツナは大馬鹿だ、甲斐セツナは大馬鹿だ、大馬鹿でアホで女顔だ」
「連呼された!」
しかも最後女顔って言ったなコイツ!!。
「ハァ・・・ハァ・・・」
しかも息切れしてるし・・・。
「私は・・・泣くよ」
次の瞬間、真顔で言われた。
「甲斐セツナの望みは叶わないよ。知ってる?あなたの望みは・・・戦うことを選んだ瞬間に叶わない。あなたが戦えば私は心配する、あなたが怪我をすれば私は悲しむ、
あなたが死ねば・・・私は泣き叫ぶ」
「ずる・・・」
「ずるくない、これは・・・私だけじゃない。月村さんやメイドの妹さん、他にも・・・沢山の人が悲しむ」
オレの望みが・・・このままでは叶わないと、ハルカは言ってくる。
「あなたは矛盾してる、それだけは・・・絶対に忘れないで」
「覚えとく・・・」
今のオレには・・・そう返すしかなかった。
ハルカを納得させる言葉が無かった。
「私、ここに居る」
「ああ・・・」
立ち止まるハルカから、オレは逃げるように石段を駆け上がった。
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「本当にバカだね・・・」
平和と戦い、その最後の選択肢をアッサリと決めた。
本当に・・・変わらない。
自分のためとか言っておいて・・・結局は誰かのため、それを自己満足だと・・・他人のためじゃないと理由を付けて・・・。
昔から・・・そう言って人助けしてた・・・。
「ツンデレだよね~」
そうしないと、本当の願いを叶えられない。
理由を付けないと、違うか・・・自分自身・・・本当の願いに気付いていないんだ。
だから、バカだ・・・それも本物の。
「バカは死んでも治らない・・・か・・・」
本物のバカって、結構沢山居るんだね。
「私は・・・守れないから、守ってあげて・・・」
例えバカでも、どうしようもないバカでも、家族だから・・・守ってあげてほしい。
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「待たせた」
石段を駆け上がると、鳥居の下になのはと、合流したユーノが並んで立っていた。
「ハルカちゃんは?」
「下で待ってる」
「セツナ、本当に良いの?」
なのはの質問に答えた時、ユーノがオレを見上げた。
「なにが?」
「君を巻き込んで・・・なのはもだよ、これは本当に危険な事なんだ」
ユーノがオレ達を交互に見ながら、今からでも退けと言ってくる。
「ユーノ、しつこい」
オレはさっき・・・その話をハルカとしてたから、もう答えは出てる。
今思えば・・・ハルカはオレに覚悟を決めさせるために、いきなりあんな話をしたのかもな・・・わからないけど。
「しつこいって・・・」
ユーノが戸惑ったような声を出すが。
「オレは決めた、そして選んだ、だから・・・ここに居る」
ファイズフォンを取り出し、オレの意思を言葉と共に伝える。
「私もだよ、決めたからここに居るんだ」
なのはも待機状態のレイジングハートを取り出すことで、ユーノに答える。
ジュエルードが取り込んだのは、犬のようだ・・・それも飼い犬だな、飼い主らしき女の人が境内に倒れている。
ただ、ジュエルシードの影響で狼のような凶悪な牙を生やし、熊のように黒く大きくなっている。
犬というか・・・狼は嫌いだけど、やってやる・・・さっきアレだけ見栄切ったんだから。
「わかった・・・二人共ありがとう。アレは現地生物を取り込んでる分、実体が有るから気を付けて」
つまり、手強くなってるのか。
「なのは、変身するまでの時間稼ぎ頼む」
オレの変身は、少しだけ時間がかかる。
≪5・5・5≫
変身コードを打ち込み、エンターキーを押す。
≪Standing by≫
腰にベルトが現れた時、ジュエルシードの暴走体が突っ込んできた。
やっぱり犬というか狼っぽいだけあって、そのスピードは速い。
だけど、こっちにはなのはが居る。
昨日みたいに障壁で防げれば、時間は稼げる。
「なのは、レイジングハートを起動して」
ユーノが指示をする。
「うん!。って、起動って・・・どうやるんだっけ?」
「「えええええええええええええええええええッ!?」」
小首を可愛らしく傾げながら、頭上に?マークを浮かべるなのは。
思わずユーノと共に声を上げる。
「起動パスワードを!!」
そういや、昨日長々と何か唱えてたな。
「あんな長いの覚えてないよ!」
涙眼でなのはが言う。
「このアホッ!?」
ファイズフォンを閉じ、ベルトに突き差しながら叫ぶ。
くそっ!カッコつけてないで早く変身すれば良かった。
「アホって酷くないかな!?」
「二人共!前ッ!!」
げっ!もう眼の前まで来てる!!。
変身は・・・間に合わない。
(ヤバい・・・)
とっさに顔を両腕で覆った。
次の瞬間、うめき声が聞こえた。
オレじゃない、なのはでもユーノでもない・・・眼の前の暴走体からだ。
腕を下ろして前を向くと、暴走体の横腹に一台のバイクが突っ込んでいた。
「な・・・」
それは・・・鋼色に黒と赤の装飾がしてあるバイクだった。
その後ろには誰も乗っていない。
だが・・・エンジンは動いており、アクセルも回っていた。
一瞬、別の暴走体かと思ったが・・・。
「ファイズ・・・」
そう・・・ファイズのベルトと、その装飾が似ていることから違うと思った。
それに、どこか・・・懐かしいような、頭にこう・・・イラッとくるような・・・変な感じがする。
無人のバイクは暴走体を吹き飛ばした後、その場で停止した。
「変身!!」
なにがなんだかよくわからないが、オレはベルトに差したファイズフォンの向きを90度回転させた。
≪Complete≫
電子音声が響き、ベルトから紅いラインが伸びて鎧の形を構築し、オレは変身する。
≪Standby ready Set up≫
なのはの方も、レイジングハートが突然輝き・・・杖とバリアジャケットが展開された。
パスワード無しでも変身できるのかよ・・・。
「凄い、起動パスワード無しでレイジングハートを」
「できるならさっとやれよ!!」
ユーノが驚き、オレは右手をスナップさせながら怒鳴る。
「そんなこと言われても・・・」
どうやら、自分の意思でやったわけじゃなさそうだな。
弾き飛ばされた暴走体が起き上がるが、またバイクが横腹に突っ込んで暴走体を弾き飛ばした。
二度目の体当たりだが、そのボディに傷一つ付かない。
「アレはセツナの物なの?」
「いや、わからん・・・」
ユーノにそう返した時、暴走体を吹き飛ばしたバイクがオレの所に来た。
ちなみにこの神社の境内には石畳や砂や石が敷いてある。
なんでそんなことをいきなり言ったかと言うと・・・バイクがオレを轢いたからだ。
タイヤを滑らせたのだろう、そうだと信じたい。
「ぐへっ・・・」
「「ええええっ!!」」
きりもみ状に宙を飛んでいると、なのはとユーノの驚く声が聞こえた。
グシャ・・・。
地面に落ちた時、バイクがようやく停止した。
「お前は何すんじゃー!!」
ムクリと起き上って、その車体を蹴りつける。
無茶苦茶固くて・・・蹴ったこっちが痛かった。
一瞬仲間かと思ったがコイツ敵か!?いや、落ち付け・・・きっと砂とか石でタイヤが滑ったんだ・・・そうに違いない!!。
「セツナくん、大丈夫なの?」
「奇跡的にな!!」
下手したら死んでたよ!マジで!!。
オレの怒りにバイクは何も言わない、当たり前だけど。
「二人共!来るよ!!」
ユーノが叫び、正面を向くと暴走体が迫っていた。
≪Protection≫
桜色の障壁が展開され、暴走体の突進を防いだ。
牙を食い込ませようと大口を開けているが、障壁はビクともせず。
≪Protective condition , All Green≫
ノーダメージで体当たりを弾き返した。
石段を滑るように弾き返された暴走体は、直ぐに起き上ったと思うと・・・いきなり逃げ出した。
オレ達から姿を隠すように、林の中に飛び込んだ。
「マズイ、ここで逃げられたら」
ユーノの言う通り、マズイ。
この近くにはハルカも居るんだ、逃がす訳にはいかない。
アイツに・・・怪我をさせる訳にはいかないんだ、心配させて、泣かせるかもしれないアイツを、オレは守らないと駄目なんだ!!。
「オートバジン!!」
そう思ったら、オレは叫んでいた。
コイツならきっと追い付けると、オレの頭が訴えていたから。
オレの言葉に答えるように、オートバジンはアクセルを噴かせる。
懐かしい・・・何故だが、昔の悪友と再会したような高揚感が胸を満たす。
「なのは、石段降りてハルカを頼む」
「えっ!?セツナくんは?」
「アイツを追いかける」
なのはが驚くのを背に、オートバジンのシートに飛び乗る。
もちろん、ハンドルやペダルに手足は届かないから・・・跨るだけで、後はオートバジンによる自動走行だ。
うん、凄くカッコ悪いなこれ・・・・。
「待って!僕も行く!!」
バイクが走り出す直前、ユーノがオレの肩に乗る。
直後、ギアをトップにしてオートバジンが走り出した。
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林の中にオートバジンが飛び込み、木々の間をすり抜けながら山を下っていく。
風は鋭い音を立てて切り裂かれ、周りの景色は滝が流れるような速さで後ろに流れて行く、スピードーメーターを見ると・・・軽く100キロを超えていた。
そのスピードと木々にぶつかりそうな恐怖は、遊園地のジェットコースターを遥かに超えていた。
「は、速い!?」
「スピード落としてぇぇぇぇッ!?」
ユーノが顔を強張らせ、オレは悲鳴を上げた。
だが、そんなことはお構いなしにオートバジンは速度を上げつつ林の中を突き抜け・・・正面に暴走体を捉えた。
「これからどうするの?」
風の音や、エンジンの音に負けないようにユーノが耳元で叫ぶ。
「こうする!!」
ユーノをシートの上に下ろし、オレはシートの上に両足で立つ。
バランスはオートバジンに全任せだが、風で身体が倒れないように注意しつつ右腰からトーチライトを外す。
続いてファイズフォンからメモリーを外し、スロットに差し込む。
≪Ready≫
トーチライトが伸び、それを右足に装着。
この速度で体当たりは不可能、そして・・・今のオレには遠距離から暴走体を倒せる武器は無い。
だから、相手の足を止めるしかない。
木々の間をジクザクに動くのを、スケボーを乗りこなすように身体のバランスを左右に動かして取る。
暴走体は速度を維持、こちらも速度を上げるが・・・距離は縮まらない。
ファイズフォンを開き、エンターボタンを押す。
≪Exceed Charge≫
もうすぐ林を抜けてしまう。
だから、速く!!。
ベルトから紅い光が、ラインを通って右足に向かう。
「オートバジン!!」
紅い光がファイズポインターに宿った直後、オレは叫びながら右足を暴走体に突き出した。
紅い光の矢がファイズポインターから放たれ、逃げる暴走体の背中に突き刺さる。
そして、紅い矢は紅い円錐に変わり・・・暴走体を捕縛しながら、回転し続ける。
だが、拘束は長くは持たない・・・凄まじい速度で動いていた相手を急に止めたその衝撃に・・・紅い螺旋が耐えられないからだ。
だから、一瞬で蹴りを入れるために・・・オレは叫んでいた。
制止する。
オートバジンが・・・急ブレーキをかけ、地面を削りながら停止する。
こちらもかなり速い速度で走っていたため、その衝撃はとてつもない。
そして・・・その衝撃は、慣性の法則によってオレに伝わり・・・シートの上から前に向けて、身体が撃ち出された。
「はあああああああああああッ!!」
紅い螺旋に飛び込む。
回転する螺旋は暴走体に突き刺さり、その身体を宙に浮かしてくの字に曲げる。。
直後、オレの身体は暴走体を突き抜けた。
両足で地面に着地した時、暴走体に紅い『Φ』の字が刻まれ、その体が灰になって崩れた・・・。
「封印・・・した・・・」
停止時の衝撃で吹き飛ばされたのか、シートからハンドルにしがみ付きながらユーノが呟く。
そう・・・封印した、オルフェノクにするのと同じように・・・その力の全てを奪って灰に帰した。
高みから大地に突き落とす、それは・・・死よりも厳しい罰だ・・・。
灰の中から、一匹の子犬と青い宝石・XVIというナンバーを刻まれたジュエルシードを拾う。
(・・・)
だけど、変な感じだ・・・。
オレは封印できると確証を持って、今の攻撃方法を選んだ。
知っているはずが無いのに・・・。
(身体が覚えてるのか・・・)
記憶が無くても、身体が戦い方を覚えているのだろうか・・・?。
わからん、まぁ・・・上手くいったから良いか。
「ユーノ、帰ろうぜ」
「あ、うん・・・」
ユーノが頷き、オレがオートバジンの所に戻ろうとした時。
「それがファイズの力か」
「「!!」」
声がした、驚いて振り向くと・・・木々の間から1人の男が姿を現した。
青いジャケットを着た、恭也にぃと同い年ぐらいの黒髪の男。
どうしてここに居るとか、今のを見られたとか、そう聞く前に。
「なんで、ファイズの事を知ってるんだ!?」
オレは叫んでいた。
この男は今、間違い無くファイズと言った・・・。
こんな男は知らない、この三年間の記憶の中で・・・出会った事は無い。
なのに、どうしてファイズを知っている?オレの知らない・・・オレを知っているのかコイツは?。
「お前は知らないのか?なら、そのベルトを寄越せ」
オレの言葉に答えず、男がそう言った。
次の瞬間、その瞳が灰色になり、顔に魚のような模様が現れ・・・その姿が変わった。
その全身が人骨を思わせる灰色の外殻に鎧われ、人間のシルエットからかけ離れた姿に変わる。
化け物と呼べる存在に・・・。
本に出てくる魚人のような姿をした、灰色の・・・骸骨のような化け物。
「オルフェノク・・・・」
それを見て・・・無意識に、オレは呟いていた・・・。