ニュース特報

2010年05月18日号

【陸山会事件】
本誌編集長の「東京地検特捜部、小沢民主党幹事長と石川知裕衆院議員の再聴取」についての解説
「売春汚職の際の読売の誤報事件、記者とニュースソースの関係と石川議員と小沢氏の関係が良く似ている」


●時事通信配信記事
 時事通信は17日、「石川議員を再聴取=18日、元公設秘書らも―陸山会虚偽記載・東京地検」という見出しで次の記事を配信した。
 小沢一郎民主党幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる事件で、東京地検特捜部は17日午後、同会の事務担当だった衆院議員石川知裕被告(36)から任意で事情聴取した。小沢氏を「起訴相当」とした検察審査会の議決を受けた再捜査の一環。
 特捜部は、会計責任者だった元公設第1秘書大久保隆規(48)、元私設秘書池田光智(32)両被告を18日に聴取する方針で、終了後、早期に小沢氏の刑事処分を決めるとみられる。
 議決書で検察審査会は、「虚偽記載について小沢氏に報告し、了承を得た」とした石川被告の起訴前の供述を、小沢氏関与の証拠として挙げた。このため特捜部は再聴取で、改めて小沢氏への報告の詳しい経緯などについて確認したとみられる。
 石川被告は聴取終了後、「検察官の質問に事実を正確に説明した。今後、自分に対する公判でも、誠心誠意対応していく」とのコメントを弁護人を通じて出した。同被告によると、聴取は午後5時半ごろまで約4時間半行われた。

●毎日新聞配信記事
 毎日新聞は17日、《<小沢幹事長>「『犯罪ない』結論出た」 会見で強気発言》という見出しで次の要旨の記事を配信した。
 事務所、政治団体が強制捜査の対象となり、(その)結果として『不正な闇献金はもらってない』『その他の実質的な犯罪も何もない』という結論が出たわけです」。東京地検特捜部による3度目の聴取を15日に受けた民主党の小沢一郎幹事長は17日、定例の記者会見で強気の発言を繰り返した。一方で再聴取については、言葉を選びながら「丁寧に答えたつもりでございます」と述べ、低姿勢ぶりをアピールした。

●本誌編集長のコメント
 小沢氏はセーフだ。
 この捜査はそもそも、東京地検特捜部の小沢氏に対する不起訴処分について東京第5検察審査会の『起訴相当』という議決を受けての再捜査だから、調べる方の目的、調べられる方の対応が一致して当然の捜査である。小沢氏の強気の発言も頷ける。

 土地購入の真相解明のための再捜査なら

@土地取引の実態
A『石川被告の政治資金収支報告書の虚偽記載という犯罪の背後に何があったか』
B『1001平方メートルの売地の東西南北の位置や地形を誰が決めたか』
C『何のために石川被告が売主に登記留保を頼んだのか、小沢氏にどんな説明をし、どんな指示をされたのか』
D『関係者が何のために売主側の関係者に「Aに言うなよ」と口止めしたのか』

 といった土地取引の実態解明なのだが、再捜査は特捜部の不起訴処分に対する検審の『起訴相当』の議決についての捜査、調べる方の目的と調べられる方の対応が一致して当然である。答は初めから出ているからだ。

 解説しよう。
 検察審査会は状況証拠から政治資金収支報告書の虚偽記載の背後にある小沢氏の行為を問題にして「起訴相当」という結論を出した。

 しかし、東京地検特捜部は売地1001平方メートルから陸山会が購入した(28番5 274平米 28番19 201平米)計475平方メートルの位置、地形を誰が
決めたのか、石川被告が登記留保を小沢氏の報告したのか、したとすればどんな指示があったのか、などの一連の流れの中から「政治資金収支報告書の虚偽記載」という問題点だけ切り取って、石川被告を起訴し、小沢氏を不起訴処分とした。

 つまり、検察審査会が問題意識を抱いた論点と検察が問題にした論点が大きく違うのである。検察審査会と東京地検特捜部の結論が異なって当然である。

●読売新聞の誤報事件
 古い話を思い出す。売春汚職事件当時、東京高検が名誉毀損容疑で読売新聞記者を逮捕した。背後にいたニュースソースの検事を突き止める目的である。
 それに対し、当時のマスコミは不当逮捕と東京高検を非難した。
 結局、読売新聞が紙面で誤報を認め、記者を処分、賠償金を払い、告訴は取り消された。ニュースソースの検事は有耶無耶となって助かった。 

 東京地検特捜部は政治資金収支報告書の虚偽記載だけ切り取って立件した。

 これだけでも大変なことである。しかし、虚偽記載の背後は秘書の壁によって阻まれた。読売新聞の誤報事件では「記者の供述がなければニスソースの検事を立件できなかった」と同様、元秘書の詳細な供述がなければ小沢氏との共謀は問えなかったのである。

 一言でいえば「検審と東京地検特捜部は斬り口が違うのと、捜査着手が遅かった」ということだ。
 小沢氏は元秘書3人が起訴されていることを重く受け止めるべきである。


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