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殺処分20万頭超…農家悲痛「これが夢だったら…」

 宮崎県の口蹄疫問題で、政府は19日、追加対策を発表した。発生が確認された農場から半径10キロ圏内のすべての牛や豚にワクチンを接種、殺処分して感染拡大を封じ込める。新たな殺処分対象となる家畜は計約20万5000頭で、累計では約32万頭に及ぶ。宮崎県で口蹄疫が最初に確認されて1カ月。沈静化の兆しは見えず、地元の畜産農家は「牛は家族の一員なのに…」と悲しみにくれている。

 10キロ圏内に該当する農家は一様に大きなショックを受けた。新たな殺処分対象は牛約5万頭、豚約15万5000頭。同県都農町で子牛など約80頭を飼育する河野辰徳さん(58)は「牛は家族の一員。覚悟はしていたが…。これが夢だったら」。西都市で牛57頭を飼育する橋口敏暢さん(66)は「涙が出てくる。口蹄疫が沈静化しても新たに牛を育てる気になれない」と肩を落とした。

 ワクチン接種は20日にも開始するが、殺処分までは1週間以上かかる見通し。家畜を手塩にかけ、家族同然に育ててきた農家も多く、川南町で乳牛と肉用牛約500頭を飼育する吉松孝一さん(53)は「殺処分されるまでの間も搾乳して、出荷できないので捨てている。乳が張って牛が鳴くと黙っていられないし、殺されるからといって餌をやらないということもできない。この苦しみは到底分からないでしょう」と声をつまらせた。

 ワクチンを接種すれば家畜がウイルスを体外排出するのを抑制でき、感染拡大のペースを遅らせる効果がある。県内で最も被害が集中する川南町を中心に、発生が確認された農場から半径10キロ圏内のすべての家畜が対象。農林水産省によると、全頭への接種には3、4日かかる見通し。半径10〜20キロ圏内は一度すべての牛や豚を早期出荷させ「緩衝地帯」を設定する。

 だが、このワクチン接種という対策に懐疑的な地元農家も多く、吉松さんは「生かしていく牛や豚への感染を防ぐために接種するべき。殺処分する牛や豚に接種するなんてなんの意味があるのか。国のパフォーマンスとしか受け取れない」と批判した。ワクチン接種は殺処分される家畜の埋却地を決めるまでの“時間稼ぎ”との指摘もある。

 口蹄疫が県内で最初に確認されて1カ月。政府の対応の遅さが感染拡大を招いたともされ、川南町で豚約7000頭を飼う遠藤太郎さん(33)は「もっと早く川南町で全頭処分をすべきだった。町民は覚悟していたのに政府の対応が遅すぎる」と嘆いた。

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