2010年5月19日
09年度のベストアドバタイザーは、今年も白い犬のお父さん―。テレビCMの好感度や宣伝効果の高さなどを調査しているCM総合研究所(関根建男代表)は、「白戸(ホワイト)家」シリーズやSMAP全員起用などで人気を集めたソフトバンクモバイルを2年連続で総合1位に選んだ。19日に都内で表彰式が行われる。躍進企業の部としては「KY(カカクヤスク)」をキーワードにした西友が1位、新規参入企業の部では女優・真矢みきが「あきらめないで」と呼びかける通販化粧品「茶のしずく」の悠香がトップ。このほかグーグルやグリーといったネット系企業の躍進や、80年代風の懐かしいCMの作風も目立つ。(アサヒ・コム編集部 柏木友紀)
◆ユーモアと歌がカギ
ソフトバンクモバイルは昨年度71作品をオンエア。白戸家シリーズでは、さだまさし、武田鉄矢ら新たな役柄の人物を次々に登場させ、ユーモラスなストーリーに新鮮さと広がりをプラスした。SMAPによるダンスCMも大ヒットとなった。
総合2位は缶コーヒー「ボス」のサントリー、3位は「一番搾り生ビール」のキリンビール。4位のロッテはガム「Fit’s」で、「噛(か)むとフニャン」をキーワードに、独特の歌とダンスで強い印象を残した。
躍進したのは西友。16作品を前年度の9倍にあたる2485回放送した。「西友にとりあえずいけや〜」と外資系家具量販店名を思わせる歌詞の曲に乗せるなど、低価格をコミカルに表現し、総合順位も459位から58位と大きく伸ばした。
CM総合研究所によると、昨年度は1971社による9030銘柄、1万7519作品のCMがオンエアされた。毎月6歳から89歳まで3000人に対し、印象に残ったCMやその理由、商品の購買意向などを調査しており、これに外出やテレビの視聴時間などの生活実態調査をかけ合わせることで、ターゲット層にCMがどの程度届いたかも調べている。これらの指標を総合的に勘案したのが今年21回目となるベストアドバタイザー賞だ。
◆広告出稿量は減少
一方、長引く不況の影響で昨年度は広告費全体が減少しており、電通の調べではテレビ広告費も1兆7139億円と前年に比べ約2000億円減らした。同研究所の調査でも、CMを放送する企業数、銘柄、作品数ともに2007年をピークに減少を続けている。平均すると1人あたり1カ月に4500本のCMに出会うが、このうち空で思い出せるのは3本程度。昨年度、何らかの好感反応を得られたのは全体の43・1%だった。
関根建男代表は「それでもテレビCMが人気を博した商品は必ず売れる。昨年度新たに269社がテレビCMに参入しているのも、その力が評価されているから。今年に入り、もう一度テレビCMに力を入れ直す企業が増えてきている」と話す。
◆ネット系企業もテレビに進出
そうした新規参入組の代表格がネット系企業だ。認知度のアップや会員数の増加などをめざし、07年2月には「モバゲーTOWN」を展開するディー・エヌ・エーがテレビCMを開始。08年5月にはSNSのグリーが、今年3月にはミクシィが参入した。
これら3社による今年4月のCM放送回数合計は、携帯電話大手3社合計の倍近くなっている。グリーは昨年度1日もCM出稿を休まず躍進企業の部で6位、検索大手のグーグルは新参入企業の部で4位に入っている。
他方、大手企業もテレビとインターネットの連動CMを次々と採用している。その手法も進化しており、「アデランスは誰でしょう?」のクイズCMや、サントリーの「ほろよい on twitter」など、新技術を使いながらマス性と双方向性の両方をうまく融合させている。
関根代表は「テレビCMとネットは実は相性がよい。テレビで広く多くリーチさせて、インターネットで深く伝える。今後ますます乗り入れが進んでいくでしょう」。
◆「懐かCM」に注目
なお手法に注目すると、特に今年に入ってから、80年代のアイドルを起用したり、当時の名作CMをリメークしたりと、懐かしさに訴える作品が目立つという。サントリーのボスは、「おニャン子クラブ」のオリジナルメンバーが代表曲「セーラー服を脱がさないで」を披露して話題を集めた。資生堂の「IN&ON」には荻野目洋子、薬丸秀美ら4人の元アイドルが登場。
キッコーマンの「幸せって 何だっけ 何だっけ〜」や、森永製菓の「クエッ クエッ クエッ チョコボール」など、歌詞や歌い手を今風に変えて再登場するものも多い。