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『GANTZ』『大奥』に『あしたのジョー』……人気マンガ続々実写映画化の悲劇

サイゾー5月18日(火) 17時 4分配信 / エンターテインメント - エンタメ総合
(絵/笹部紀成)
──映画の原作を人気マンガに求める流れが、近年の邦画界ではトレンドになっている。熱心なファンの多いマンガほど、彼らの納得のいく作品を作るのが難しいのは明白。にもかかわらず、実写映画化の流れは絶えない。マンガ界が映画とのメディアミックスをやめない理由はどこにあるのか?

『海猿』(04)、『NANA』(05)など2000年代半ばから、マンガを原作とする邦画が増えた。今月は『ソラニン』(小学館)が封切られ、今春以降も、『君に届け』『GANTZ』(共に集英社)など、人気マンガを原作とした映画が控えている。だが、『ゲゲゲの鬼太郎』(07)、『デビルマン』(04)などの例を見ても、人気のある作品だからといって安易に実写化すれば、結果として原作のファンから「原作レイプ」と批判されることは容易に予想できる。

 近年のこの潮流に対し、「だんだんマンガ原作映画は減っていくはずです」と、京都精華大学マンガ学部客員教授で『マンガ進化論』(P-Vine BOOKs)などの著書を持つ中野晴行氏は言う。

「マンガを実写化する場合、仕掛けも大掛かりでお金もかかるのに、興行的には大コケしたものもたくさんあって、出資する側も冒険できなくなっている。昨年の『20世紀少年』(小学館)も、60億という莫大な総製作費に見合う収益には至っていません」

 イベントのために太陽の塔を改造するなど、宣伝にも力の入っていた『20世紀少年』でさえ、そんな結果なのだ。原作の版元である出版社だけでなく、テレビ局や広告代理店もどう転ぶかわからないものに高額を出せる経営状況ではない。ただ、「もともとワンコンテンツ・マルチユースがビジネスモデルのマンガ業界は、映像化を推進していくほうがいい」と中野氏は続ける。

「もっと海外に展開すればいいんです。ハリウッドや韓国でもコンテンツは不足しています。マンガ原作なら先に画があるから手軽だし、日本のマンガは評判がいい。実際、『オールド・ボーイ』のような成功例もあります」(同)

 小学館は海外展開のための子会社、ビズ・メディアを立ち上げるなど積極的に版権ビジネスに取り組んでいるが、それに続く出版社はないのが現状だ。加えて、日本のマンガを実写化する際の難点は、原作側の意向が反映されすぎる点にあるという。

「マンガ独特の表現をそのまま映像にしようとしたり、原作にこだわりすぎるんです。媒体にふさわしいアレンジの仕方があるはずで、再現するだけでは原作を超えられるわけがない」(同)

 しかし、映画業界関係者は、「むしろ今は、観客側がマンガ的表現に慣れてしまっていて、映画らしい作品を作っても当たらない」と反論する。

「もちろん、どんなに原作に忠実でも、ファン全員を納得させるのは難しい。ですが、オリジナルより作りやすく、客層も読める。要は費用対効果の問題で、一定の知名度で動員が期待できて、版元的にも原作の売り上げが見込めるような、製作費をつぎ込んだ大作か、それほどコストもかからない小規模作品しか今は作れないんです」(同)

「皆が観てるハヤリの映画を観る」という人が増えている昨今、製作側は話題性のあるマンガ原作ものを打ち続けざるをえない。映画業界もマンガ業界も生き残りに必死なのだろうが、安易な実写化が続けば、どちらのファンからも見放されることになるのでは?

(文/新見 直)

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  • 最終更新:5月18日(火) 17時 4分
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