【社説】中小企業の技術を盗む世界一流企業

 公正取引委員会は中小企業が開発した中核技術を大企業が奪う行為を防ぐため、請負法に「技術関連資料の提供を強要する行為の禁止」を定めた条項を新たに設けるとともに、職権による調査を実施すると発表した。違法行為が摘発された場合には、改善命令や課徴金の賦課、検察への告発などの措置を下し、常習性がある場合には、公共工事への入札制限や企業名の公表といった制裁も加えるというものだ。

 納品契約の中断や取り引きの中止をちらつかせながら、中小企業が苦労して開発した技術を大企業が盗む行為は、文字通り破廉恥な犯罪行為だ。大企業はアフターサービスに必要という口実で、納品を受けた部品の設計図や技術資料の提供を下請け会社などに要求する。時には世界のトップ企業も、特許の共有を露骨に求め、これに応じるかどうかによって、納品単価に反映させることもある。その後、一定の期間が過ぎると契約を破棄し、別の中小企業に技術を供与してより低価格で納品を受ける。公正取引委員会の調査によると、中小企業の22%がこのようなやり方で技術資料を強奪あるいは流用された経験があると回答した。

 だが、中小企業は技術を強奪した大企業を訴えたところで、得るモノより失うモノの方が多い。これも、中小企業が挫折を感じる大きな要因だ。ある携帯電話端末部品を生産する企業は、との4年以上にわたる特許紛争を経て、最終的には大法院(日本の最高裁に相当)で勝訴した。しかし、訴訟の費用を確保するため本社ビルを売却し、研究員も全員が退社したため、企業は倒産寸前の状況に陥ってしまった。

 政府は中小企業の技術を保護するため、2008年8月から「技術任置」と呼ばれる制度を施行している。中小企業が開発した技術関連の資料を、中小企業庁傘下の大企業・中小企業協力財団に保管し、後に紛争が起こった場合には証拠として活用するという制度だ。ところが、中小企業は大企業の顔色をうかがうばかりで、これまでこの制度を利用したケースはわずか250件に過ぎない。

 財閥グループのトップたちは、大統領主催の会議などが行われる度に、中小企業との共存を約束しているが、中小企業の側で感じる変化はほとんどない。財閥系の企業は相変わらず中小納品業者の技術を強奪し、取引先の弱みにつけ込んでは価格の引き下げを強要している。また、このような手口で目標を超過達成したと宣伝する子会社の社長に勲章を与え、栄転させるような風土では、中小企業を不利な状況から救うことは簡単ではない。このような行為を日常的に繰り返し、数兆ウォン(1兆ウォン=790億円)の利益をため込んでいるというのだから、これを恥ずかしいとも思わない大企業に対しては、法律で代償を払わせるしかないだろう。

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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