ドイツ政府がユーロ圏諸国の国債や独大手金融機関の株式の空売り禁止に乗り出した。金融市場の安定を狙って規制を強めたのだが、突然の発表を機にかえって株式は売られ、通貨ユーロも下げた。危機の根っこにある通貨・財政問題や金融機関の経営不安に取り組むのが先決と、市場は告げているようにみえる。
欧州の金融動乱を招いたのは「イナゴの大群」(シュタインブリュック前独財務相)と呼ぶべき投機的な取引だ、との指摘がドイツでは根強い。欧州連合(EU)加盟27カ国は18日の財務相理事会でファンド規制法案を決めたが、一連の空売り規制は国内世論に配慮した面が強い。
直接の市場規制はリーマン・ショックの前後にも各国が試みたものの、市場の動揺を抑えるのに役立ったとはいえない。今回の措置も、ドイツの大手行を含む欧州の金融機関の財務体質の悪化は予想以上に深刻との疑心暗鬼を生んでしまった。
例えば国債の70%を国外消化に頼るギリシャ。対外借り入れ全体に占めるドイツからの分は21%とフランスに次ぐ。財政赤字の深刻な南欧諸国の国債の国外消化比率はポルトガルで85%、スペインでも44%にのぼる。そうした国債をドイツの銀行と機関投資家が大量に保有している。
ドイツの銀行は中東欧向けの与信額が多く、それらが問題債権になっていると指摘されていた。引当金の計上など不良債権処理でも米金融機関に後れを取っていた。金利の高い南欧のユーロ圏向けの融資や国債保有で利ザヤを稼ごうとしていたが、その資産価値が急落したことで、銀行の自己資本が傷ついているとの懸念が高まっているわけだ。
金融機関同士の相互不信が深刻だからこそ、金融市場の動揺が収まらない。信用収縮は欧州の景気回復を一段と鈍らせる恐れがある。日米と比べ欧州の金融機関は新興国への投融資を拡大していただけに、欧州の信用収縮がグローバルな資金の流れを阻害するリスクも否定できない。
市場の警鐘を正面から受け止め、欧州が一丸となって財政立て直しと金融の安定に取り組まないことには、悪循環に歯止めがかからない。欧州経済の要石のドイツは、もっとその自覚を持ってほしい。
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