Ｗ杯日本代表に秘密兵器　埼スタの「戦術解析システム」

フィールドすべてを網羅するように設置された戦術解析システムのカメラ＝さいたま市緑区の埼玉スタジアム

　さいたま市緑区の埼玉スタジアムに今年新たに「戦術解析システム」が導入され、２４日に行われる日本対韓国の代表戦で本稼働する。試合中の選手の動きをコンピューター上で解析し、データ化するシステムが国内のスタジアムで常設されるのは初めて。来月に迫ったサッカーＷ杯南アフリカ大会ももうすぐ。システムは不振にあえぐ日本代表を救う秘密兵器になるだろうか。

メーンスタンドの一角に５台のカメラがさりげなく設置されている。スタジアムの景色に溶け込んでいるが、少しずつ異なる角度を向いて、フィールドすべてをカバー。そしてカメラから伸びる回線は解析作業を行うフランスまでつながっている。

　戦術解析システムは、カメラがとらえた選手の動きを分析。シュートやパス、ボール支配率、走行距離やスピードなどさまざまな項目ごとに分けられ、試合数日後にチームに報告される。

　国内ではこれまでポータブルカメラや臨時に設置したカメラで解析されていたが、県は今年、約１千万円をかけて常設システムを埼玉スタジアムに設置した。

　解析過程や結果は極秘だが、データを目にしたスタジアムの職員は「（日本代表に選ばれた）阿部勇樹選手の走行距離やダッシュが優れているのがよく分かった」と話す。

　カメラ導入の背景には日本代表戦の誘致がある。埼玉スタジアムのサッカー利用は昨年度、日本代表の試合が行われなかったことなどが響き、年間観客数（アマチュアの試合含む）は前年より約１８万人減った。観客の減少は収支を左右するため、日本代表戦はぜひとも開催したい。「独自の常設カメラによって、より精度の高い分析ができる」と埼玉スタジアムの森美秀事業推進本部長はアピールする。

　１２月には２０２２年のＷ杯開催国が決まる。常設システムは招致活動をしている日本サッカー協会の犬飼基昭会長の協力要請に応える形にもなり、埼玉スタジアムを再びＷ杯会場にすることも視野に入れている。

　システムはＪリーグの試合にも活用され、４月１８日と５月８日に行われた浦和レッズのリーグ戦で試験運用された。スタジアムによると、ドイツで同様のシステムを活用していたフィンケ監督が導入を喜んでいるという。

　「システム導入が浦和レッズの強化と観客数の増加につながれば」とスタジアム関係者。埼玉スタジアムが期待する「新戦力」は、日本代表やＷ杯、レッズ戦で“ゴール”を挙げられるだろうか。

他のニュースも読みたい方は...

【WEB埼玉ホームへ】