混乱が拡大しているバンコクからの定期航空便が20日朝、福岡空港に到着した。降り立った人のなかには、停電に巻き込まれて出張を切り上げた会社員や、幼子を連れて急きょ荷物をまとめた母親もおり、到着ロビーで疲れた表情を見せた。
「夫の勤め先から家族は帰るよう連絡があり、慌てて荷物を用意しました」。バンコク中心部の日本人が多い地区に住んでいるという木村直美さん(36)は、生後7カ月と3歳の子どもを抱いて帰国した。
連絡があったのは、治安部隊が元首相派の強制排除を始めた19日朝。窓からは3カ所で黒煙がもうもうと上がるのが見え、夫も自宅待機に。
「黒い煙を見て不安になって…。赴任した昨年12月から落ち着いて生活できたのはわずかです」と話した。長崎市の夫の実家でしばらく状況を見るという。
出張を2日早く切り上げた会社員男性(54)は、宿泊先のホテルが変電所への放火で停電したという。「館内は真っ暗でエレベーターも止まり、23階の部屋から歩いて下りた。食事もようやく機内でとり…。大変でした」と足取りも重かった。
=2010/05/20付 西日本新聞夕刊=