前回は、柔軟なアイデア出しから生まれたさまざまな面白いサービス、そしてアイデアをどのように事業にしていくかなどについて伺いました。今回はユニークな給与体系、人事評価などについて語っていただきます。
――組織のマネジメントについてうかがいたいと思います。御社は変わった給与システムがありますね。
「サイコロ給」のことですか?これは文字通り、サイコロをふって出た目で給料を決めるという制度です。ありがたいことにいろいろなメディアで取り上げていただいています。
「サイコロ給」の前に、カヤックの給与体系全体についてご説明します。給与は、基本給、能力給、山分給、サイコロ給の4つの要素から構成されています。 基本給は、年齢など基本的な社会人としてのスキルによって決まります。勤続年数が増えれば自然に上がっていくようになっていて、組織も社員も年数をへてお互いに成長することを前提とした給与です。 |
山分給は、年2回のボーナスです。一つの組織にいる以上、組織が好調ならその喜びはみんなで味わいたい。社員同士の競い合いも大事ですが、小回りのきく組織であるためには、チーム内での足の引っ張り合いはなしです。隣のプロジェクトの成功も一緒に喜ぶための給与です。
――それぞれに哲学を感じます。これらがあって、サイコロ給があるわけですね。具体的にはどのようにやるのでしょうか?
特注でつくったサイコロを、各自が毎月給料日前にふり、「(出たサイコロの目の数)%×基本給」が、給料の+αとして支給されます。減ることはありません。
――ここにも深い考え方があるのですね。
おそらくこちらをご覧になられてる読者の方もご納得いただけるかと思うのですが、やはり人間が人間を正しく評価するというのは、なかなか難しいことではないかと思います。たとえば、評価をする上司との相性や感情一つで左右される可能性がある。と考えると、そもそも完璧ではない他人の評価で暗い気持ちになるのはもったいない。資本主義のものさしで測れない価値だってあると考えたんですよ。
であれば、評価に余白を設けておいて、そこの部分は運を天に任せてみて、サイコロを振った出た目で決まるくらいでもいいんじゃないか、と。
そして、カヤックでは評価内容を公表するようにしています。そこにはもちろん僕も含まれます。公平感は大事ですから。ただそもそも、給与の仕組みで「これが完璧」というものはないと思うのです。みんなが納得するかどうかだと思います。