面白法人カヤック 代表取締役 柳澤大輔 社長インタビュー|たまごが立たないコロンブスたちへ!

社長インタビュー たまごが立たないコロンブスたちへ!Vol.078

掲載日:2010年5月19日  社長インタビュー一覧
個性を束ねるクリエイター社長 面白法人カヤック 代表取締役 柳澤大輔
次々とアイデアが生まれる次世代の組織論
「面白法人カヤック」。社名を聞くだけで面白そうでワクワクさせてくれるではないか。だが、実態は社名以上に面白い。変化の速いIT業界にスピードとアイデアで切り込み、業績を伸ばし続けている。製品を売りに行く、いわゆる営業職はいない。全員がクリエイターなのだ。クリエイター集団とはどのような組織なのだろうか。個性の強い彼らをマネジメントする手法とはどのようなものなのだろうか。3人代表制を敷く面白法人カヤックで「代表取締役CREATOR」の肩書を持つ柳澤大輔代表に、会社が活性化する組織論について伺った。

面白法人カヤックとは

面白法人カヤック 1998年、合資会社カヤックを創業し、2005年に事業を引き継いで株式会社化。
代表取締役は柳澤大輔、貝畑政徳、久場智喜の3名。鎌倉に本社を置き、経営理念は「つくる人を増やす。」。カヤックオリジナルのサービスとクライアントサービスを軸にユーザー参加型のECサイトやコミュニティサイトなど、さまざまなWebサイトの企画・開発・運営を行う。東京インタラクティブ・アド・アワード、カンヌ国際広告賞、One Show、東京インタラクティブアドアワードなど、国内外での数々の賞を受賞。
ブレインストーミングを活性化する会議室「閃考会議室」を開発し、鎌倉本社とともに2008年グッドデザイン賞を受賞。近年では、ギャラリー、カフェなどリアルショップも運営し、2009年には明和電機とともに「貧乏ゆすり」をテーマにプロダクト開発も着手する。
「サイコロ給」、「旅する支社」などユニークな制度も実験中。
たまごが立たないコロンブスたちへ!とは?

目指せば、社長は誰でもなれる時代…。
でも、社長には、必ず苦難の壁が立ちふさがります。そのような壁を乗り越え、輝く成功をつかみ取った社長たちの物語に、カリスマ顧問の越石一彦が鋭く迫ります。

聞き手 顧問 越石一彦

前回は、柔軟なアイデア出しから生まれたさまざまな面白いサービス、そしてアイデアをどのように事業にしていくかなどについて伺いました。今回はユニークな給与体系、人事評価などについて語っていただきます。

給与の仕組みにかんぺきなものはない

――組織のマネジメントについてうかがいたいと思います。御社は変わった給与システムがありますね。

サイコロ給」のことですか?これは文字通り、サイコロをふって出た目で給料を決めるという制度です。ありがたいことにいろいろなメディアで取り上げていただいています。

サイコロ給」の前に、カヤックの給与体系全体についてご説明します。給与は、基本給、能力給、山分給、サイコロ給の4つの要素から構成されています。


基本給は、年齢など基本的な社会人としてのスキルによって決まります。勤続年数が増えれば自然に上がっていくようになっていて、組織も社員も年数をへてお互いに成長することを前提とした給与です。

能力給は、職種に応じた手当で、各自のパフォーマンスによって決まります。自分にしかできないこと、自分の市場価値を知ってもらうことも大事だと考えています。


山分給は、年2回のボーナスです。一つの組織にいる以上、組織が好調ならその喜びはみんなで味わいたい。社員同士の競い合いも大事ですが、小回りのきく組織であるためには、チーム内での足の引っ張り合いはなしです。隣のプロジェクトの成功も一緒に喜ぶための給与です。

――それぞれに哲学を感じます。これらがあって、サイコロ給があるわけですね。具体的にはどのようにやるのでしょうか?

特注でつくったサイコロを、各自が毎月給料日前にふり、「(出たサイコロの目の数)%×基本給」が、給料の+αとして支給されます。減ることはありません。

――ここにも深い考え方があるのですね。

おそらくこちらをご覧になられてる読者の方もご納得いただけるかと思うのですが、やはり人間が人間を正しく評価するというのは、なかなか難しいことではないかと思います。たとえば、評価をする上司との相性や感情一つで左右される可能性がある。と考えると、そもそも完璧ではない他人の評価で暗い気持ちになるのはもったいない。資本主義のものさしで測れない価値だってあると考えたんですよ。

であれば、評価に余白を設けておいて、そこの部分は運を天に任せてみて、サイコロを振った出た目で決まるくらいでもいいんじゃないか、と。

そして、カヤックでは評価内容を公表するようにしています。そこにはもちろん僕も含まれます。公平感は大事ですから。ただそもそも、給与の仕組みで「これが完璧」というものはないと思うのです。みんなが納得するかどうかだと思います。

人はパーセンテージでシェアする

――御社は、社員一人ひとりが権限をもって仕事をしているというイメージがあり、また、社員の方々のコメントなどからも、そのような面がうかがえます。ただ、権限が分散しますと、マネジメントは難しくなるかと思うのですが、どのようにマネジメントされているのでしょうか?

たしかに社員たちは「うちは権限が与えられているので、やりがいがあります!」といった発言を、いろいろなメディアでしているようです。ただ、そこで言っている権限というのは、自由に何かをつくることができるという権限であって、予算を自由に使える権限ではありません。

けれども、会社によっては何か新しいものをつくろうとしても、稟議書を書いて、上の人間を何人も通して、数か月後にほんの少しだけ「やってみろ」といった会社もあるでしょうから、そういった意味ではできるだけ、自由にモノづくりできる環境は用意したいなと思っています。

――損益における人件費のコントロールなどはどのようにされているのでしょうか?

大雑把に3段階に分けまして、どのランクの人が何%コミットしているかを計算すると、プロジェクトごとの人件費が出ます。

 

「何%コミットしているか?」というところは、少し変わっているかもしれません。カヤックではほとんどの社員が複数のプロジェクトを掛け持ちしています。例えばある人がA、B、Cの3つのプロジェクトを掛け持ちしているとしたら、自分の能力配分をAに50%、Bに30%、Cに20%というように決めるのです。

そのようにすると、このプロジェクトには合計で何人分の人がかかわっているという数字が出ます。それでプロジェクトの人件費が出るわけです。

――たしかにそれはユニークですね。

3か月に一回、チームの編成を変えており、伸びているプロジェクトに人を増やしていくのですが、特に人事異動というものはなく、同プロジェクトにかかわる人数とパーセンテージで増やします。Cのプロジェクトが伸びているので、あの人の20%をCにくださいとか、そのように人を増やしていきます。

――すごい!いわゆる一般的な会社のやり方とはかなり違いますね!

結局、クリエイターしかいませんから、お金を使ってお金を増やすという発想にはなりにくいのです。基本的には、ものをつくって、発信して、収益を生み出すという考えになります。そのようになると、予算というのは人件費が大半を占めます。それをどのようにマネジメントしていくかというときに、パーセンテージでシェアするという発想に至ったわけです。

今回は、「サイコロ給」というユニークな給与体系の意味、人事評価、プロジェクトの損益計算などについて伺いました。次回は、柳澤代表のビジネス観や今後の組織論などについて伺います。



【次号】第4回:勝利に向かう過程で成長できれば成功である。


アイデアは考えるな。

柳澤大輔 著  発行元 : 日経BP社

価格 : 1,365円(税込み)

 

アイデアを出せないという悩みを持つ人の共通点は、「すごいアイデア」を出そうとしてしまっていること。

 

でも、「すごいアイデア」を出している人は、その何倍も「すごくないアイデア」を出している。

 

ピカソは生涯2万点の絵を描いた。
バッハは毎週少なくとも1つ作曲していた。
エジソンの死後、メモがびっしり書かれた3500冊あまりのノートが発見された。


まずは「すごくないアイデア」をたくさん出すところから始めよう!


ユニクロをはじめとするウェブ制作で高い評価を得、年間100以上の新サービスを世に送り出す面白法人カヤック。そのクリエイティブな組織づくりの秘訣は、トコトン楽しく働くことにこだわること。「アイデアをたくさん出すノウハウ」は「楽しく働くノウハウ」そのものだ。


ウェブ業界が注目するブレストの達人の極意を解き明かす一冊。


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越石 一彦 KOSHIISHI,Kazuhiko
株式会社クライアントサイド・コンサルティング 代表取締役社長
アントレプレナードットコム株式会社 代表取締役会長

 

史上最年少31歳で山一證券池袋支店の課長に就任。メリルリンチ日本証券を経て、株式会社クライアントサイド・コンサルティングを設立、代表取締役に就任。
現在、企業顧問として、現場の直接行動を劇的に変化させる実践論を中心に常時20社以上のベンチャー企業や上場企業の経営を支援。
また、アジア国際支援財団の評議員 議長、函館大学非常勤講師も務める。「ビジネスで成功する決め手は、パーソナルブランド」(ゴマブックス)など著書、講演多数。

 

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