莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見
【第2回】 2010年5月20日
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莫邦富 [作家・ジャーナリスト]

中国人に本格派“和食通”が急増中!
チャンスを生かしきれていない
日本酒ビジネスへの提言

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中国人がお土産にミニ樽ばかり買うのは
日本酒ブランドの認知の低さゆえ

 しかし、1990年代後半から徐々に変化が見られるようになってきた。まず、中国でも刺身やお寿司がよく食べられるようになった。日本を訪れた中国関係者を迎える時、「食事は何にしましょうか」と質問すると、たいていは「せっかく日本に来たのだから、和食にしましょう」という答えが戻ってくる。しかも、中国を出る前に、「一番おいしい寿司屋を予約しておいて」、「ミシュランに載っている日本レストランがいい」、「築地周辺で店を押さえてもらえないか」といった注文の電話がかかってくることも増えた。

 しかも、豪華な新店舗より創業当時の様子を留めた本店に案内したほうが喜ばれるようになった。時々予想外の注文が舞い込んできて、こちらが右往左往することもある。たとえば、「水谷で寿司を食べたい」という希望が送られてくる。だが、わずか10席程度しかないこの店はなかなか予約が取れない。そうすると、代替案として「すきやばし次郎はどうだ?」と提案しなければならない。こちらの日本食の予備知識が試されるような気がして緊張が走る。

 だが、こうした和食に結構こだわりのある中国人を和食レストランに案内しても、日本酒に対する注文は案外シンプルだ。「飲み物は何にしますか」と訊くと、ビールに対してはみんなそれぞれの好みがあり、アサヒにするかキリンにする人が多い。上海からのお客さんだとサントリーを選ぶ人も結構いる。だが、日本酒になると、みな一斉に私を見て「莫さん、決めてください」と言う。

 その時、気付いた。日本酒自体はみな結構注文するが、ブランド名はほとんど認知されていないのだ。考えてみると、筆者自身も成田空港の免税店でこれまで何度か日本酒をお土産に買ったことがあった。しかし、ブランドで選んだことは一回もなかった。容器が日本的デザインなら喜んで選ぶ。ミニ樽に入った日本酒を選ぶ回数が断然多かった。どうせほとんどの中国人が日本酒のブランドを認知していない。酒の内容やブランドよりも容器のデザインや包装の方が重要な選択要素になってくるのだ。

 そこで閃いた。日本に暮らす中国人に中国語で推薦する文章を書いてもらって、その文章を空港のお酒売り場に貼れば、多くの中国人訪日客がその日本酒を選んでくれるのではないかと思った。

 2008年から年間100万人の中国人観光客が日本を訪れるようになっている。しかもその規模がどんどん大きくなっている。日本の酒造業界もこうした市場ニーズに応え、もっと中国語による商品紹介やブランド戦略を考えたらいかがだろうか。

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莫邦富(モー・バンフ) [作家・ジャーナリスト]

1953年、上海市生まれ。85年に来日。『蛇頭』、『「中国全省を読む」事典』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーに。そのほかにも『日中はなぜわかり合えないのか』、『これは私が愛した日本なのか』、『新華僑』、『鯛と羊』など著書多数。


莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見

地方都市の勃興、ものづくりの精度向上、環境や社会貢献への関心の高まり・・・中国は今大きく変わりつつある。先入観を引きずったままだと、日本企業はどんどん中国市場から脱落しかねない。色眼鏡を外し、中国ビジネスの変化に改めて目を凝らす必要がある。道案内人は日中を行き来する中国人作家・ジャーナリストの莫邦富氏。日本ではあまり報道されない「今は小さくとも大きな潮流となりうる」新発見を毎週お届けしよう。

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