2010年5月17日
ブラジルの大学とネット回線をつなぎ、双方向の授業が行われた=2日、名古屋市
日本国内のブラジル人学校などで働く教員らの教育力向上を図ろうと、東海大学(神奈川県平塚市)とブラジルの大学が連携して「遠隔教育コース」を開設した。ブラジルの教員免許が日本で取れるように支援する初の試みで、約270人が受講中だ。受講生は「日本で暮らす子どもたちのために頑張りたい」「教育者としての自分を高めたい」と意気込む。
在日ブラジル人は日系人を中心に約30万人。ブラジル人学校は全国に約80カ所あるが、教員免許のない人もいて、経験や能力は人によって差があるという。ブラジル政府は、全体の教育力を高めるために教員免許の取得を促そうと考え、ブラジルの初等教育(幼稚園〜小学4年生)の教員免許が取れるように、通信教育が受けられる仕組みを作った。
コースは4年間で、2009年7月に始まった。インターネットを使った通信教育のほか、年6回は受講生が全国3〜6カ所の会場に集まって講義を受け、各地の教員同士で連携を深める。ブラジルのマトグロッソ連邦大が通信教育と遠隔授業を担当。東海大はポルトガル語ができるスタッフを置き、受講生が通信教育を休みがちな場合に電話するなどの支援をする。日本社会に関する授業も行う。
2日には、ネット回線でブラジルとつないだ心理学の遠隔授業が3カ所であった。名古屋会場では、東海大教養学部の小貫大輔准教授も「日本の地理をブラジルと比べながら学ぼう」とポルトガル語で授業をした。
受講生の1人、茶屋道マリさん(37)は1990年に来日した日系2世。愛知県内の公立小学校で補助教員として保護者向けの文書の翻訳や通訳をしている。「読む量も多くて大変だけど、自分も成長したいし、子どもたちの役にも立ちたい」。別の日系3世の受講生(45)は「日本で生活するブラジル人のための基本的な勉強もできるのがいい」と話した。(見市紀世子)