先日、アメリカの格闘ゲーム総合サイト「SRK」のフォーラムで海外プレイヤーから日本のプレイヤーへの質問を募集しました。今後も日本のプレイヤーへのインタビューを継続していきたいと思います。
今回は海外プレイヤーの質問にウメハラが答えてくれました
- 現在は日本のほうが技術的に海外よりも上であるという状況だが、今後アメリカやヨーロッパのシーンはどのように変化すると思うか?
日本よりむしろ海外のほうが延びていくと思う。その過程で海外の盛り上がりに影響を受けて日本のシーンが盛り上がるという可能性はあると思う。
日本人は外国で盛り上がっているという情報に弱いので、日本を盛り上げようと思うならむしろ海外を盛り上げていく方がいいかもしれない。レベルも今は日本の方が高いけど、いつまでその状態なのかはわからないと思う。
5,6年前と比べれば海外のレベルは明らかに上がっている。ゲームセンターが無いからハンデになるとは思うけど、そのうち向こうが本気を出して、強い人同士が積極的に対戦する機会が増えれば、追いついてくるのは時間の問題だろうな、と。
ただ、海外についていいなと思ったが弱点にもなり得ると思ったポイントはプロ制度。
プロ制度はレベルアップにつながるだろうと思っていたけど実は逆効果もあって、お互い情報を出したくないとか、自分の格を下げたくないとかで、上手い連中がある程度の立場を築くと上手い人同士ではやらなくなっちゃう傾向があるんですよね。それが全体のレベルアップの面ではマイナスになっちゃう可能性があるなと思った。
そういう状況だと開発力のある人が強いんだけど、日本ではそういう人たちも含めてみんなガンガン対戦するから今のレベルがある。だけど、もし日本でそういう出し惜しみをするような状況になってしまうと、今みたいなレベルは保っていられなくなるんじゃないかと思う。
- 日本のプレイヤーと海外のプレイヤーのゲームに取り組む姿勢の最大の違いはどこだと思いますか?
日本人は見るほうとやる方にわかれがちだけど、向こうは全員が当事者意識というかプレイヤー意識のようなものを持っている気がする。
レベルは日本の方が高いのに、なぜか日本人って「まあゲームだし」みたいな割り切りがちょっとあってどこか冷めている部分があるけど、海外はそれがない。
環境が悪いからレベルは低いけどゲームとかスポーツとかを分けて考えていない。これはこれでひとつのカテゴリとして真剣にやっている。日本でもそういう人はいるんですけど、その割合は向こうの方が絶対的に多い。
プレイのレベル的には日本の常識で見れば「全然わかってないな」と思っちゃうようなレベルの人でも、「ダイゴ、ここはなんでこうしたんだ?」という質問を受けたときに「意外に見てるところはしっかりしてるな」と思ったりすることもあって、「見る文化」が発達しているのかなと思う。スポーツでもなんでも。
まあ、目が肥えているからプレイヤーとしていいというわけでもないけど。それは全く別問題だから。
ただ、とりあえず意識が高いですね。
- 海外の大会に行きたいと思ってる人はいるのか?
みんな行きたいと思ってるんじゃないかな。少なくとも旅費とかの問題がなければ行きたい人は相当いると思う。昔とは違ってEvoの存在が相当大きい。
かっこいいじゃないですか、Evoの見せ方が。規模的には他にもっと大きかったり人が集まったりハイレベルな大会があるんだけど、アメリカ人は見せ方が上手いと思う。 プレイヤーだったらEvoという舞台でちゃんと扱われたいというのがあると思う。
- 今後日本でも上手いプレイヤーはプロとして認められるべきだと思いますか?
べきかどうかはわからないけど、あっていけないことはないと思う。ちゃんと好きで真面目にやってる人は真面目にやってるし、ルールさえ覚えちゃえば格闘ゲームは誰が見てても楽しいものだと思うし。事実海外には存在するし。
ただ、まず日本でプロゲーマーが認められるためにはプレイヤー以外に面白さを知ってもらう必要がある。
そしてもうひとつ、プレイヤーをかっこよく見せるべきだと思いますね。
- スト4のキャラ差について
どのゲームにも強い技とかキャラがあるじゃないですか。スト4はそれが比較的少ないほうだと思うんだけど、むしろ俺にとってはそれがマイナスで、もっと「このキャラのこの技ホント強いよな」って思うくらいの個性を出したほうがいいと思う。 たぶんそれを開発が怖がっている。「このキャラのこれが強い」といわれるのがイヤだみたいな。
スト4ではサガットだけが目立って強いというのが問題なんだと思う。
強いキャラがいたり、便利な技があること自体は、それでゲームがつまらなくなることはない。むしろ面白くなる要素だと思う。
- 家庭用で練習していますか?
コンボとかで気になったところとかを。
- キャラ決めの時に重要視していることは?
最近やるゲームって、例えばカプコンのゲームだと絶対リュウがいるじゃないですか。だったらなんかリュウみたいな。
でも、オーソドックスな2D格闘ゲームであれば、飛び道具が好きなんで、とりあえず飛び道具持ってるキャラを選んで・・・あとはこれってのは決めてないですね。
でも、やれることが多いキャラ。「このキャラはこうしないとダメ」ってのが決まってないキャラが好きですね。それは単純に動かして楽しいってことなんで。
- 見た目は気にしない?
昔は見た目で選んでました(笑)
今は全体的に使いまわしのどこかで見たことのあるようなキャラクターばかりなんで、本当の意味での新キャラがいないから見た目を判断する以前の段階なんですよね。
でも根っこの部分では見た目で選びたいという気持ちはある。やはりかっこいいキャラのほうがいいですよね。
- 色とかは?
昔は鮮やかな色を使っていましたね。鮮やかな青系とか白っぽいのがよかった。
茶色とか汚い感じのは最近で、ちょっと目立たない色が好み。
- 格闘ゲームにもっとも求めるものは?(バランス・リズム感・デザインを例に挙げての質問)
一番大事なのはリズム感だと思ってます。頭で考えてやることのも大事なんですけど、リアルタイムでやることなので
気持ちよくなきゃダメだと思う。ゲームだし。
- バランス・デザイン・リズム感それぞれの面で一番よかったゲームを挙げてください。
バランスは、いいなと思ってても途中で壊れちゃうってパターンもあるので難しい。
例えばゼロ3ってある意味最高だと思ってるんですけど、途中からつまらないゲームになっちゃったんで……。
最終的な現状の攻略レベルで見たときに一番遊べるなってのは実はカプエス2だったのかなと思う。前キャンありきでも他のゲームに比べれば戦えるキャラが多い。
- デザイン
ヴァンパイアかな。動きの綺麗さも含めるとハンターが一番好きですね。ヴァンパイアはちょっとカクカクしてる感じで、まだちょっと粗いんですよ。ハンターはすごいキレイ。で、セイバーになったらまたちょっと粗くなっちゃうんでグラフィック面ではハンターですね。
- リズム感
やっぱりハンターですね。あとはまあゼロ3かな。ゼロ3はゲーム性が少し悪くなっても爽快感はあった。ガードクラッシュがあったから。あとはギルティXXもよかったです。
- スランプと感じるときは?
結果とは別に、面倒くさがっちゃうときはスランプだなと思いますね。
気の持ちようのはずなんですけど、面倒くさがらずにやろうと思ってても面倒くさがっちゃうプレイになる時があって、それが不調っていうか、モチベーションが下がっているという状態でいわゆるスランプなんだと思う。
自分にとっては面倒くさがってるというか丁寧さに欠けると思った時は仮に勝っていてもスランプだなと思う。
- スランプのときはどうする?
昔に比べればスランプ自体が余り無いんですけど……。
例えば大会前で毎日やってるのにそういう状態の時には疲れてるってことなんで、長時間散歩したり格闘ゲームと関係ないゲームをやって気分転換する。やはり散歩ですね。
余りやってない時は、単純にちょっと忘れてるということなので集中的にやるようにしてます。その時どういう練習をやってるかによって変えますね。バランスがとれるように。
- 体を動かして脳を活性化させるというような方法は意識したりする?
体に刺激を与えて大会でいい動きができないかなというのは実は昔大会で試したんですよ。2回くらいやったのかな。
その時は大会直前まで走ってたんですよ。そうするといざ始まってみるとすごい反応が早い。
ただ、そのやり方には欠点があって、スタートダッシュはすごい強いんだけど、その後急に調子がだーって下がってしまう。日本の大会みたいに一発勝負ならそれでいいんですけど、Evoとかの長丁場だと、最初はすごいんだけど徐々に落ちていくんですよ。それが結構後々きいてくる。
なので、手が冷えて動かないとかはさすがに無いようにするけど、今は特に運動せずに集中することと、食事のタイミングを気にしている。
- 食事について
昔はあまり食べなかったんですよ。食べると胃に血液が集まって集中できなくなるから食べないというやり方だったんですけど、それもさっきとおんなじ理由で、体力が不足していくと集中できなくなっていっちゃうんですよね。特に長いスパンの試合だと、バランスのいいものを大会が始まる時間を計算して、2,3時間前にしっかり食べるという風にかえました。ちょうどおなかがおちついてきたくらいで試合、というふうに。
- 食べ物にどう気を遣うか?
特に種類には気を遣っていない。
昔、大きな大会の前に緊張で胃がやられたことがあって、そのときは食べたいものが食べられず胃にやさしいものを食べるしかなかったんだけど、そのときは最悪だった。食べられないから体力がなかった。最悪でしたね……。
集中するとやはり負担が大きい。
ガチで30戦決めてやると普通に試合するよりはるかに消耗する。
あと、本気で大会に臨むときは逆に水分を少なめにする。自分はふだん普通の人よりかなり多めに水分をとるんですけど、水分をとりすぎると手に汗をかいて、レバーがすべる可能性があるんですよ。実際コマンドミスをしたことが過去に何回かあったんで。
それくらいですね。何を食べるか、何を飲むかなどについては気にしていないです。
- ベガの長所と短所
長所は・・・拒否能力ですね。短所は攻撃力の低さっすね。新ネタはないっすね。
- バルログとやる時は他のキャラと同じように緊張する?
同じ。
特にリュウは「このキャラとやるから気を抜いていい」というのは無い。差があって6:4くらいだと思うんでバルログだから気を抜くことはない。
- バルログは弱いと思われてる?
思われてますね!
ただ実際は、そういうキャラは結構大会では活躍する。みんな知らないから。
- 大会での慣れないキャラへの対策というのは持っている?
一発勝負だったら押し付けるしかないですね。対応はムリなんで。
ただ、ダブルエリミネーションのような時は逆に、序盤は完全に捨てて相手が何をやってくるか見極める。
Evo09でジャスティンがフェイロンを使ってきたときは一回Loser'sに落ちようと決めていた。普通にやったら無理だろうから、ちゃんと見て対策を立てて。アメリカのルールだったら攻略さえしちゃえば勝つチャンスが大きいんで。
- ではもしグランドファイナルでさらに違うキャラが出てきたら危なかった?
危なかったかもしれない。
ただ相手も人間なので、そういう時に出してきたキャラで冷静に動けるかは疑問ですね。
(2009年12月2日 東京中野 ゲームバーB’にて)