|
きょうの社説 2010年5月20日
◎県の6月補正予算 追加対策で回復の兆し拡大を
知事裁定で編成の大詰めを迎えた県の6月補正予算案に求めたいのは、県内でも見え始
めた景気回復の兆しを拡大し、地域経済全体に波及させるような効果的な追加対策である。3月の知事選の影響で、県の今年度当初予算は必要経費や継続事業中心の「準通年型」 となった。これから予算を肉付けするタイムラグを前向きにとらえれば、経済動向や雇用情勢の変化に即した機動的な対策を打つチャンスでもある。2段構えの予算編成の利点を生かし、地域経済を浮揚させる次の一手に知恵を絞ってほしい。 日銀金沢支店が発表した5月の金融経済月報では、北陸の景気について「緩やかに持ち 直している」と全体の判断を据え置いたが、有効求人倍率の伸びや製造業に残業が増えたことから、雇用・所得は11カ月ぶりに判断を上方修正した。業種別では工作機械の判断を1年3カ月ぶりに引き上げた。輸出企業の回復ぶりは、金沢港のコンテナ貨物取扱量の増加にも表れている。まだ楽観できる状況にはないが、雇用情勢にも薄日が差してきたのは明るい材料である。 県の当初予算は、景気が「二番底」に陥る懸念が強かった冬場に編成され、経済・雇用 を中心に守勢を強いられる印象もあった。ここにきて攻めの姿勢を発揮できる環境も整ってきたのではないか。谷本正憲知事は、選挙で県立中央病院の建て替えなど大規模事業も公約に掲げたが、それらの着実な実行とともに、6月補正を2段目のロケットにして景気の回復傾向を本物にする創意工夫がいる。 県は2014年度の北陸新幹線開業へ向け、7月にも「STEP21県民推進会議」を 発足させる。開業の年まで残り4年であり、会議のスタートに合わせ、民間の意欲に火をつけるような思い切った施策を示す必要がある。 3月には今後5年間の産業革新戦略もまとまった。新産業の育成は自前の財源を確保し 、雇用基盤を安定化させるうえでも極めて重要であり、6月補正でその芽出しが望まれる。河北門復元や宮守(いもり)堀の水堀化で一区切りつけた金沢城公園の整備も、県民の夢を広げる新たな方向付けが欠かせない。
◎口蹄疫で全頭殺処分 国有地に埋める方法もある
家畜感染症の口蹄(こうてい)疫の被害が拡大するなか、政府が発生地域から半径10
キロ以内の牛や豚をすべて処分する対策を発表した。対象となる家畜は牛が約5万頭、豚が約15万頭の計約20万頭に上り、地元の経済的損失は極めて大きいが、九州全域はもとより、全国への広がりが懸念されており、全頭殺処分はやむを得ない。問題は殺処分した家畜を埋める土地の確保である。宮崎県では、埋却処分用地と人手が 不足し、既に殺処分対象となっている計11万8千頭のうち半分程度が処分されていないという。感染した牛や豚は、膨大な数のウイルスをまき散らす。早急に土に埋めないと危険である。封じ込めは時間との戦いだ。埋めるに適した土地探しに時間がかかるなら国有地や公有地をフル活用し、総力を挙げて拡大を防いでほしい。 宮崎県は今月2日に陸上自衛隊に災害派遣を要請した。それでも、消毒を熟知した防疫 員や家畜の扱いに慣れた専門家が不足しており、感染を確認しても家畜を殺処分し、埋めるまでに時間がかかる。感染が急拡大してからは1週間かかるケースもあり、この時間短縮が大きな課題である。 政府は、全頭処分にはさらに10日以上かかるとみて、あらかじめ全家畜にワクチンを 打ってウイルス放出を抑制する。免疫ができ、感染の速度が遅くなるのである。獣医や自衛隊員も増員するという。全頭処分を確実に、また効率的に進めていくために、早急に埋却処分用地の選定や手順などを定めた工程表を作らねばならない。農家に対しては何らかの形で、経済損失補償を行う方針だが、畜産農家の協力を得るには、今のうちから補償方針の大枠を提示しておく必要があるのではないか。 政府は発生確認から1カ月近くを経て、ようやく全閣僚が参加する対策本部と現地本部 を設けた。対応が後手に回り、被害が拡大した。全頭処分を確実に進めるには、国が前面に立って感染防止に取り組む必要がある。「お役所仕事」では初動の遅れを取り戻せない。汚名返上のつもりで、封じ込めに全力を挙げて取り組んでほしい。
|