進む多床室併設、「国民年金では個室無理」の声−特養・個室ユニットの行方(1)
5月12日18時52分配信 医療介護CBニュース
特別養護老人ホームで、多床室を整備する流れが目立っている。国の参酌標準では、特養は2014年度には定員ベースで全体の70%をユニット化する目標が定められているが、ユニットケアを実施する特養施設は、08年10月時点で1630施設(全体の27.1%)、定員ベースで8万9571人(同21.2%)と、目標到達には相当厳しい状況だ。今後の個室ユニットケアの行方を探った。
千葉県では09年度から個室ユニットと併せて多床室を整備することを認めており、補助金も個室と多床室共に400万円としている。
整備の割合については、定員の50%以上は個室ユニットで整備するよう求めているが、地域の実情によっては弾力的に対応する場合もあるといい、県の健康福祉部高齢者福祉課では、多床室の割合が6割というようなケースもあり得るとしている。
群馬県でも、大澤正明知事が2月17日の定例記者会見で、都会に住む人やサラリーマンは、「ユニット型」にも十分入居できるが、地方では第一次産業の従事者が非常に多く、受給しているのは国民年金のみとした上で、理想論で「ユニット型」を進めるというのは、現状認識が少し違うのではないかとし、県として「多床型」の併設も進めたいとの考えを示している。
このほか、神奈川県もユニット型個室と多床室が併設されている施設を「一部ユニット型」施設として認可する方向で検討していることも、キャリアブレインの取材で明らかになった。
全国老人福祉施設協議会の中田清会長は、特養の個室ユニットは約6万円のホテルコストに加え、食費3万円、介護保険の自己負担分の1割を考慮すれば、月の負担は12万―15万円程度とし、「ある意味で、有料老人ホームの分類」と指摘する。(編注・食費および居住費は原則自己負担だが、所得状況に応じて負担額が軽減される「特定入所者介護サービス費」=補足給付=の制度がある)
また、1つの町や村に特養が1か所しかない場合など、建て替えですべて個室ユニットにしようとすれば、低所得者や生活保護を受けている人が行く場所がなくなるのではないかと話す。
中田会長は、個室ユニットの必要性は認めながらも、「個室ユニット一辺倒ではなく、少しは利用者の選択肢を広げることが必要ではないか」と言う。
また、入居者の状態が重度化していたり、経管栄養などの医療行為が必要な人も増えたりしていることから、働く介護職、看護職の動線を考えれば、全部個室ユニットでは大変とし、多床室があってもいいのではと話す。
さらに、個室ユニットには1人当たり1.7人か1.8人の人員配置が必要とした上で、「それだけ配置したら、人件費がかなり高騰して赤字になる。もっと配置を厚くするためには報酬を上げなければいけないが、これだけ厳しい介護保険財政の中でそれができるのか」と疑問を呈する。
個室ユニットでは職員の定着率がよくなく、新たに入った職員が夜勤に入ったりすると、プレッシャーから辞めるケースもあるという。結局、人員配置を手厚くしたければ、正職員では難しいからと、パートや臨時職員で対応しようとすると、定着しないといった悪循環が結構見られるという。
中田会長は、「多床室といっても、昔のような4人や6人部屋ではない。それなりにプライバシーを保てる多床室を用意すべき」と言う。
【関連記事】
・ 佐賀県の「一部ユニット型」特養、国と異なる解釈で報酬を算定
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千葉県では09年度から個室ユニットと併せて多床室を整備することを認めており、補助金も個室と多床室共に400万円としている。
整備の割合については、定員の50%以上は個室ユニットで整備するよう求めているが、地域の実情によっては弾力的に対応する場合もあるといい、県の健康福祉部高齢者福祉課では、多床室の割合が6割というようなケースもあり得るとしている。
群馬県でも、大澤正明知事が2月17日の定例記者会見で、都会に住む人やサラリーマンは、「ユニット型」にも十分入居できるが、地方では第一次産業の従事者が非常に多く、受給しているのは国民年金のみとした上で、理想論で「ユニット型」を進めるというのは、現状認識が少し違うのではないかとし、県として「多床型」の併設も進めたいとの考えを示している。
このほか、神奈川県もユニット型個室と多床室が併設されている施設を「一部ユニット型」施設として認可する方向で検討していることも、キャリアブレインの取材で明らかになった。
全国老人福祉施設協議会の中田清会長は、特養の個室ユニットは約6万円のホテルコストに加え、食費3万円、介護保険の自己負担分の1割を考慮すれば、月の負担は12万―15万円程度とし、「ある意味で、有料老人ホームの分類」と指摘する。(編注・食費および居住費は原則自己負担だが、所得状況に応じて負担額が軽減される「特定入所者介護サービス費」=補足給付=の制度がある)
また、1つの町や村に特養が1か所しかない場合など、建て替えですべて個室ユニットにしようとすれば、低所得者や生活保護を受けている人が行く場所がなくなるのではないかと話す。
中田会長は、個室ユニットの必要性は認めながらも、「個室ユニット一辺倒ではなく、少しは利用者の選択肢を広げることが必要ではないか」と言う。
また、入居者の状態が重度化していたり、経管栄養などの医療行為が必要な人も増えたりしていることから、働く介護職、看護職の動線を考えれば、全部個室ユニットでは大変とし、多床室があってもいいのではと話す。
さらに、個室ユニットには1人当たり1.7人か1.8人の人員配置が必要とした上で、「それだけ配置したら、人件費がかなり高騰して赤字になる。もっと配置を厚くするためには報酬を上げなければいけないが、これだけ厳しい介護保険財政の中でそれができるのか」と疑問を呈する。
個室ユニットでは職員の定着率がよくなく、新たに入った職員が夜勤に入ったりすると、プレッシャーから辞めるケースもあるという。結局、人員配置を手厚くしたければ、正職員では難しいからと、パートや臨時職員で対応しようとすると、定着しないといった悪循環が結構見られるという。
中田会長は、「多床室といっても、昔のような4人や6人部屋ではない。それなりにプライバシーを保てる多床室を用意すべき」と言う。
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最終更新:5月12日18時52分
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