東村山市は、行財政改革と称して公立保育園の民営化を打ち出し、3月定例会で「2012年から東村山市第二保育園を民間に移管する」と発表しました。突然の発表に保育園保護者からは不安の声が上がっています。日本共産党市議団は公立保育園の民間移管は保育に対する公的責任の放棄であり、市内保育関係者からも理解を得られない暴挙であると考えます。以下日本共産党東村山市議団の見解を明らかにします。
特定の保育園で保育を受けている児童と保護者は、期間満了(卒園)まで保育を受けることを期待できる法的な立場にある−横浜市の公立保育園民営化反対訴訟の最高裁判決−
東村山市は、3月6日、突然第二保育園保護者へ「第二保育園を民間に移管する」と通告しました。4月25日の二回目の説明会で、「新しい保育園(本町、青葉町)ができるが運営費の目処が立っていない。それを捻出するために公立を民間に移管する」と、事業者選考の日程など今後の進め方を一方的に報告、事業者選考委員会へ第二保育園保護者会から5人の委員を選任するよう求めるなど、保護者の意向を十分汲み取ることも無く、遮二無二民営化を推進しようとしています。
第二保育園の保護者からは、「初めて聞いたのに決まったように説明されるのは納得いかない」「保護者の意志も聞かないで決められるのか」「選んで入った保育園。何の不満もない。何で民間に?」「公立保育園に入ったのになぜ民間になるの」「先生方が自分の小さい頃も知ってくれている。今が良い」「子どもたちのことは考えないのか」「民営化って何?どうなるの」などの不安と疑問の声が日々高くなっています。
民営化に反対した横浜の保護者が起こした訴訟で、横浜地裁は2006年5月、「保護者の同意を得ずに実施した」横浜市の民営化強行を「違法」と断罪しました。さらに最高裁は2009年11月の判決で「特定の保育園で保育を受けている児童と保護者は、期間満了(卒園)まで保育を受けることを期待できる法的な立場にある」と判断しました。
第二保育園の児童と保護者が公立保育園で保育を受け続ける権利があるといっているのです。東村山市はこの判決を真摯に受け止め、民営化は撤回すべきです。
渡部市長は、子ども達に配慮して引き受け事業者との引継ぎ期間を6ヵ月、その後も旧保育園の職員を派遣すると説明しています。
保育士は家庭でいえば父母や兄や姉の役割を果たしています。何ヶ月引継ぎ期間があろうとも、母とも父とも思う保育士と引き裂かれることで子ども達の心は大きく傷つくのです。円形脱毛症になったり、夜尿症がでたり、保育園に行きたがらなかったりというたくさんの問題が引き起こされていることは、全国で民間委託や移管された保育園で子どもたちに起こっていることです。
どんなに優れた社会福祉法人がこの保育園を受け取っても、親や兄弟ともいうべき大切な人から引き離されて傷つかない子どもはいません。これが民間移管を絶対にしてはいけない一番大きな理由です。
市長は、「子育てするなら東村山」を標榜し、子育て支援策に取り組むと公言してきました。
公立保育園を「民間移管」するという市長の考えは、「民間でできるものは民間で」「官から民へ」という小泉内閣の「構造改革」路線を背景に、経費削減だけを目的にしたものであり、市長が言う「子育てするなら東村山」の立場と大きく隔たるものです。
いま「少子化」が日本の社会全体の大問題ですが、子育てを安上がりにするという考えの「少子化対策」は、欧米諸国にはありません。子どもを産み育てることが喜びとなる「子育て支援」こそ世界の流れです。
保育は人が人を育てるものであり、お金がかかるのが当たり前です。そういうものを経費削減の対象にしないでほしい。これは、保護者、市民の願いです。
市長が真に子どもたちの未来を考えるのなら、政府・財界主導の路線をそのまま持ち込むのではなく、これまでの市の保育行政の到達点を生かし、「安心して子どもを産み育てられる社会」実現へ力をつくすべきです。「子育てするなら東村山」という政治姿勢に、忠実であるべきです。
東村山市の方針は、2012年から公立8園のうち指定管理となっている第8保育園を除く7園中3園を順次民営化するというものです。そのねらいが公立保育園の保育士を減らし、人件費を削減することにあることは明白です。
保護者への説明で市長は、「公立は私立より保育園の運営費が約5千万円多く掛かる。私立には国や都の補助金が3千万円あるが公立保育園にはないから。人件費の差もある」と、公立保育園はお金が掛かるから民営化するのだと強調しました。
小泉構造改革で国や東京都の公立分の保育運営費負担金が一般交付金化されたことは事実ですが、「国から来るお金は変わっていない」と所管部長は日本共産党議員の質問に答えました。東村山市はそのお金を保育に使いたくないといっているのです。
国や東京都の補助金があるからといって、私立保育園の経営が楽なわけではありません。東京都の石原都政は、革新都政時代につくられた民間福祉施設の人材確保のための公私格差是正の補助金制度を廃止して、サービスの種類によって補助金を交付する制度に変えました。
その結果、民間保育園では出前保育、子育て相談、園庭開放などたくさんの保育サービスメニューを実施しなければ補助金が下りず、保育士の数は増やせないのに事務量が増え、大変な思いをしていると民間保育園の園長先生たちが嘆いています。
保育予算の90%は人件費です。そのお金を削り、保育士の処遇が悪化するなどということは、子どもを育てる現場であってはならないことです。
人件費が大幅に削減され、安定した勤務が保障されないとしたら、重要な発達段階にある子どもたちに与える影響は計り知れません。民営化がすすんでいる他の自治体では、低賃金で、1年雇用の派遣保育士の入れ替わりが激しいところもあるといいます。
保育園はベテラン保育士、中堅保育士、若手保育士によって構成され安定した体制が確保されてこそ、子どもたちの心と体の健やかな育成に責任を負うことができます。保育技術、保育力の継承も可能となります。
「保育のレベルは低下させない」というのなら、公立も私立も分け隔てなく必要な予算を投じることこそが、地方自治体の取るべき姿勢ではないでしょうか。公立、私立の予算格差に着目して民営化を推進する市の姿勢そのものが厳しく問われなければなりません。
児童福祉法第2条は国及び地方公共団体の責務を、「児童の保護者とともに、児童を心身ともに、健やかに育成する責任を負う」としています。東村山市はその任を果たすべきです。
市長は口を開けば「財政難でお金がない」と言います。しかし、その一因は大型開発や大型道路建設や新たな箱物建設を無計画に行ってきたところにあります。前市長とともにそれを推進してきた渡部市長の責任は大きいと言わなければなりません。
同時に、今年度以後も、大型開発や大型道路の建設計画、25億円も掛かるリサイクルセンター建設計画など目白押しです。これを見直すなら、予算は十分確保できます。お金の使い方が問われています。
市長は、「民間なら柔軟なきめ細かいサービスをできる」と言って、保護者の賛同を得ようとしています。しかし、私立の保育園が独自に保育サービスを開始することは経営上も不可能です。予算措置による保育士の配置などが必要だからです。
住民要望に応えたきめ細かな保育サービスの充実は、市長が決断を下し予算をつければ、公立でも私立でも実施できます。市長が示唆した病時・病後児保育も、東村山市が小児科医の理解と協力を得て、予算をきちんとつけて始めればいいのです。公立保育園の民間移管は必要ありません。
日本共産党東村山市議団は、第二保育園や公立保育園の民間移管にキッパリと反対します。
同時に、
(1)国・都の保育所運営負担金の公立分の復活と、国の負担率の大幅引き上げ
(2)認可保育園の新・増設を進めるとともに、病時・病後時保育などの要求に応える
(3)公立保育園を守り、保育所運営費を増やして、民間保育園への人件費補助を増やす
(4)保育予算を増やして、高い保育料を引き下げる
(5)各種認可外保育施設利用者への保育料差額補助を実施する
という政策を掲げ、引き続き保護者、市民、保育士のみなさんとともに、議会内外でがんばります。
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