2010-05-19
農水省官僚のtwitterから、口蹄疫感染対策の事実関係を紹介する
口蹄疫感染問題で、責められるべきは、現閣僚とマスメディアの「無知」にある。
それが、宮崎県民の不安をあおり、日本人の不信感を高めているのだ。
その感染拡大は、数多くの誤解に満ちたウワサ話を招いている。
なかには、それを信じて、「憎しみ」に近い感情を抱いている人たちもいる。
今回は、ある農水省官僚のtwitterを参考にしながら、事実を把握していこうと思う。
・口蹄疫対策に関する霞ヶ関の「中の人」のつぶやきまとめ
まず、このツイートの発言者についてまとめてみる。
きわめて信用に足る情報源であることがわかるはずだ。
1.農水省の公式アカウントではない。
2.この発言者は、口蹄疫対策の担当者ではない。
3.口蹄疫対策担当者に公式アカウントによる発言を提案したが、認められなかった。
4.ゆえに、あくまでも発言者の個人的見解にすぎない。
5.ただし、この発言者は、昨年の鳥インフル対策の担当者である
6.さらに、宮崎県畜産課の勤務経験もある
それでは、このツイートまとめから、口蹄疫感染の事実関係を紹介していこう。
以下、目次。
(1) 日本産の牛肉や豚肉は輸出停止状態なのか?
(2) 人体に影響がないのに、なぜ殺処分するのか?
(3) 感染経路はどこから? 韓国からの牛肉輸入再開が原因では?
(4) 報道規制はあったのか?
(5) 消毒液の横流しはあったのか?
(6) 感染拡大は宮崎県の対応に問題があったのか?
(7) 政府の対応は適切であったのか?
・まとめーー不安と不信感を招いた現政権とマスコミの姿勢を批判せよ
(1) 日本産の牛肉や豚肉は輸出停止状態なのか?
日本は口蹄疫確認した4/20に牛肉、豚肉、皮の輸出証明書の発行を止めてるからその日以降の輸出はない、とのこと。
ただし、5月11日時点で、香港とマカオには牛肉輸出を再開している。
なお、日本は口蹄疫感染が発覚した時点で、その国から輸入することはない。
これは、米国やオーストラリアなど、世界のほとんどの畜産国家も同じである。
(2) 人体に影響がないのに、なぜ殺処分するのか?
口蹄疫は人体に影響ないとはいえ、その加工段階で、感染が拡大する可能性が高い。
そのために、口蹄疫感染が発覚した場合は、農場単位で殺処分しなければならないのである。
そうでないと、畜産業が経済としてなりたない。
その義務を怠る農場に行政が支援することは許されないことだ。
もちろん、このような対策は日本だけではない。
口蹄疫の感染力は強く、その封じ込めができない国家は、国際的に批判されるのは当然のことなのだ。
(3) 感染経路はどこから? 韓国からの牛肉輸入再開が原因では?
感染源や感染経路等に関しては、東国原・宮崎県知事が、みずからのブログで、次のような「お願い」を書いている。
感染源や感染経路等に関する様々な噂話も飛び交っている。どうか、正確な情報に基づいて行動して頂きたい。
感染経路についての事実関係が明らかではない現状で、安易にそれらの判断を下し、その流布に加担すべきではない。
「犯人探し」は専門家にゆだねるべきだ。地元民の悲しみを怒りに変えないためにも。
なお、ネット上では、韓国から感染したのではないか、とささやかれているが、その事実関係は、現在のところ不明である。
まだ、韓国からの感染だと断定できる状況にはない。
韓国からの牛肉輸入再開が、口蹄疫感染を招いた可能性はあるかもしれないが、それを事実とするのは、現段階では誤りである。
なお、ワクチンを使用することは、「口蹄疫清浄国」となることを大きく遅らせることになる。
「口蹄疫清浄国」に復帰しないかぎり、国際的に日本の牛肉と豚肉が「安全」と見なされることはできない。
そして、日本産肉のブランドを低下させることにもつながる。
中国ではワクチン投与が活発に行われているが、日本産肉に求められるのは、そういうものではないのだ。
宮崎県の二地域での封じ込めに成功している今、ワクチン投与は国益を損なうはずである。
【追記】
政府は5月18日になって、ワクチン投与を決定した。
ワクチン投与後に全頭処分へ…政府方針(読売新聞) - Yahoo!ニュース
これは、殺処分対象の家畜によるウィルス蔓延を防ぐための「時間稼ぎ」とのこと。
(4) 報道規制はあったのか?
口蹄疫に関する情報は、農水省のホームページで、4月20日以降、即時的に公開されている。
・農林水産省/口蹄疫に関する情報
http://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/katiku_yobo/k_fmd/
実務を担当する農水省官僚にとっては、行きすぎた報道は、防疫体勢を大きく狂わせるものであるだろう。
冷静な報道姿勢を求めるのは当然のことだ。
しかし、今回の口蹄疫感染で、地元民を中心に「不信感」が広がったのは、過剰な地元マスコミと、無関心な中央マスコミの温度差にあったと思われる。
それが「宮崎県民は国に見捨てられたのでは?」という不安を抱かせるようになったのだ。
いずれにせよ、農水省ではホームページを通じて、その対策については、情報を隠蔽してはいない。
ただ、それを中央マスコミが報じていないだけである。
なお、10年前の口蹄疫感染の事例を、農水省のホームページで隠蔽しているのではないか、という疑惑がネット上でささやかれているが、これは事実無根である。
なぜ、このような疑惑が起こったかは、ウェブ魚拓などを見ても不明である。
なお、現在では、情報は公開されている。
もちろん、これまで、書類をアップロードしなかった農水省の職務怠慢は批判されてしかるべきだが。
(5) 消毒薬の横流しはあったのか?
インターネット上では、民主党幹部の地元や諸外国に消毒薬の備蓄が回されたために、宮崎県で適切な処置を取ることができなかったという声がささやかれている。
しかし、国が消毒薬を保有する、ということは慣例にないようだ。
つまり、「消毒薬の横流し」については、事実無根であると思っていい。
また、九州四県では、国費負担による消毒の実施がされている。
ただ、地元農家で、消毒が遅れたために感染が拡大したと考える人は出るだろう。その理由として「国に備蓄がなかったから」と考える可能性がある。
これらの説明が徹底できなかったからこそ「消毒薬の横流し」というデマがまかり通ることになったのだ。
(6) 感染拡大は宮崎県の対応に問題があったのか?
読売新聞のウェブサイトでは、次のようなリストが掲載されている。
http://www.yomiuri.co.jp/zoom/20100518-OYT9I00147.htm
あたかも、4月20日の口蹄疫感染が発覚する以前に、県が予防できたのではないかと思わせる記載をしているが、認識不足としかいいようがない。
獣医師に責任があるというのは、「口蹄疫」への知識がない者の、勝手な憶測にすぎない。
この程度の認識で報道をしている、読売新聞のレベルの低さが思い知らされるというものだ。
もちろん、現状の法律では、家畜防疫は、県の対応を前提にしている。
しかし、去年の鳥インフルのときは、担当者であるこの発言者は、地元農家とも直接対話を試みるなどしていたようだ。
農水省は県と協力して、様々な対策を打ち出している。
決して、農水省が何もしていないわけではない。
そのような宮崎県の対策については、東国原・宮崎県知事のブログに、わかりやすく書かれているので、参考にしてほしい。
・東国原英夫 公式ブログ
http://ameblo.jp/higashi-blog/
宮崎県の口蹄疫感染対策が遅れた、というのは事実無根である。
(7) 政府の対応は適切であったのか?
赤松農水大臣は、口蹄疫対策は「適切な処置であった」と繰り返し語っている。
事実、5月8日には、次のような支援策が出されている。
このように、農水省では、次々と対策が出されていたのだ。
しかし、この「口蹄疫感染問題」は、今では、政治問題となりつつある。
宮崎県の2地域内の封じ込めができている今、域内感染に歯止めをかけることがもっとも重要だ、とこの発言者は語る。
だんだんと政局をからませた発言が出てくることに、戸惑っているようだ。
実務を担当する農水省官僚にとっては「そんなことを言ってるんじゃない!」という思いだろう。
なぜ、このような「政治問題」となってしまったのか。
それは、与党と野党が協力することなく、それぞれの対策本部の連携がされていないからだ。
4月29日に、自民党の対策本部(本部長 谷垣総裁)は、政府に要請申し入れをしたが、当日になって、鳩山総理と赤松大臣は、予定をキャンセルした。
それは、この口蹄疫感染対策を、政府が本気で取り組んでいないように、人々には映ったのだ。
その後の対策でも、政府から納得のいく説明を耳にすることはない。
現閣僚や政務官が「口蹄疫」に関して無知ではないか、という疑惑を抱かざるをえない状況なのだ。
このツイートでは、農林省官僚が、積極的に情報を提供している。
twitterによる、これらの情報提供には、まったく頭が下がる思いだ。
表には立たないものの、農林省も、宮崎県の口蹄疫感染対策には、全力で取り組んでいるのだろう。
しかし、官僚はともかく、政治家はその説明責任を果たしているのか。
今回の口蹄疫感染が、政治問題となりつつあるのは、そんな現政権の「危機管理能力の無さ」を不安視する声が高まっているからだろう。
この問題については、経験豊富な自民党の対策本部と協力するべきであった。
それができない現政権の認識不足は、批判されてしかるべきであろう。
当事者でない我々にとっても、このような現政権の取り組みの甘さは、不安でしかない。
このような不信感が、口蹄疫感染問題を、「政治問題」にしたのだ。
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