北教組事件 組合トップ・長田被告が初公判で違法な資金提供を認めて謝罪

検察官は「組織として再犯防止に当たるとは考えにくい」と禁固4カ月を求刑

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写真・札幌地裁に向かう長田秀樹被告

 

 昨年8月の衆院選をめぐって北海道教職員組合(北教組)側が、民主党の小林千代美衆院議員陣営に違法な選挙資金を提供したとされる事件で、北教組幹部ら4人が政治資金規正法違反(企業・団体献金の禁止)の容疑で逮捕(2人は後に起訴猶予処分)され、人も金も組合丸抱えだった選挙の実態が露呈した。

 この事件で起訴されたのは、小林陣営の会計責任者で自治労北海道財政局長の木村美智留被告(46)、陣営の選対委員長を務めた北教組委員長代理の長田秀樹被告(50)と団体としての北教組。

 木村被告は18日の札幌地裁初公判で、選対が活動資金に窮したことを理由に、小林陣営の選対委員長だった北教組委員長(昨年6月死亡)と、後に選対委員長に就いた長田被告から4回にわたって計1600万円の違法な資金提供を受けたことなどを全面的に認めた。検察官は禁固6カ月を求刑、3年間の公民権停止を求め、裁判は即日結審した。

 北教組は、昨年の衆院選で北海道5区から出馬して当選した小林衆院議員の選挙で「責任産別労組」として全面的に選挙を支援。長田被告は北教組委員長の死亡後、委員長代理となり、委員長が務めていた小林選対の選対委員長を引き継いだ。

 木村被告に資金の提供を依頼され、現金400万円を渡したとされる長田被告と北教組の初公判が、19日午後1時30分から札幌地裁(園原敏彦裁判長)で開かれた。

 52日間の拘留後、保釈され、グレーのスーツを着て出廷した長身痩躯の長田被告は、人定質問で裁判長から「あなたは北教組の代表者ですか」と聞かれ、「はい。そうです」と答えた。

 検察官は、2008年12月4日から09年5月20日までの計3回、北教組委員長が北教組の中央執行委員室で木村被告に現金計1200万円の資金を提供、09年7月28日は長田被告が江別市野幌の小林選対で木村被告に現金400万円を供与したことを記載した起訴状を朗読した。

 長田被告は罪状認否で「間違いありません」と起訴事実を全面的に認めた。

 検察官は「小林は財政基盤のない候補で、各労組が資金を持ち寄った可能性があると思ったが、そのようなことを聞くのは無粋と思った」(道議の供述)、「長田さんが事務所で『これ、頼まれたもの』と封筒を差し出したので、400万円を用意してくれたと思った」(木村被告の供述)、北教組が「対策費」として出金した計1600万円の振替伝票の写しなどを証拠として提出、裁判所が採用した。

 被告人質問では、木村被告が次のように供述した。

 弁護人 4回にわたって、400万円ずつを木村さんに渡したことは間違いありませんか。

 被告人 はい、間違いありません。

 弁護人 あなたが400万円を渡したのは、会計の木村さんから頼まれたので供与したのですか。

 被告人 事務所経費がかさみ、経費が不足していること、以前は(北教組)委員長に頼んでいたことから木村さんの依頼を受けました。解散、総選挙が延びて経費がかさんだこと、(教育現場における)競争主義の転換を図るためには、政権交代を果たし、とりわけ5区では勝たなければならないと思いました。 

 弁護人 あなたが選対委員長になる前、北教組から3回の資金が出されたことは知らなかったのか。

 被告人 はい、知りませんでした。木村さんから聞いて知りました。

 弁護人 今回供与したのは対策費として支出されていますか。北教組の会計規定上、根拠はありますか。

 被告人 はい、あります。

 弁護人 対策費とはどのようなものですか。

 被告人 当初予算には計上されていない臨時的なものです。

 弁護人 資金は委員長や委員長代理である自分が誤った判断で支出したのか。

 被告人 はい、今回の支出は私の判断が誤ったものと考えています。私が行った資金提供は許されるものではなく、深く反省しています。

 検察官 09年7月の400万円の寄附は、北教組で仮払いの伝票処理がされていることを知っていますか。

 被告人 後で知りました。

 検察官 あなたは北教組書記長に400万円を何に使うかを説明しましたか。

 被告人 していません。

 検察官 対策費はいくらあるのですか。

 被告人 年間約2000万円です。

 検察官 この金の原資は組合員から集めた組合費ですか。

 被告人 はい、そうです。

 検察官 誤った使い方をしたことを組合員に説明しましたか。

 被告人 今後、きちんと説明したいと思っています。

 検察官 1600万円は今後、補填しなければならないのでは。

 被告人 私は(保釈後の接見禁止処分のため)組織とは一切接触していないので、今後、適正に協議したいと思います。

 検察官 2月15日に(札幌地検が北教組本部に)捜索した際、あなたは立ち会っていましたが、直近6年間の会計帳簿類は発見されませんでした。それらはいま、どこにあるのですか。

 被告人 私は分かりません。

 検察官 対策費の帳簿類は、当時どこにあったのですか。

 被告人 分かりません。

 検察官 会計担当になぜ、そのことを聞かなかったのですか。

 弁護人 その辺のことは分かりません。

 右陪席裁判官 (09年)7月28日にあなたが木村氏に400万円を渡したとき、違法であるとは考えなかったのですか。

 被告人 違法であるとか、違法でないとかよりも、支出をせざるを得ないと考えました。そこまで考えが及びませんでした。

 右陪席裁判官 あなたは400万円を出させるとき、どのような手続きをしたのですか。

 被告人 私から書記長に指示しました。

 右陪席裁判官 400万円の支出は(北教組の)大会で、組合員にどのように報告をするつもりでしたか。

 被告人 考えずに出しました。

 裁判長 400万円はどうして出さざるを得なかったのですか。 

 被告人 (事務所開きから)1年以上、事務所が運営され、以前(委員長が支出した3回)も出していたので、私がやめることにはなりませんでした。

 裁判長 (木村被告の)要請を受けてからあなたはそれほど悩まなかったようですが、どのようなことを考えていたのですか。

 被告人 いろいろ考えました。

 裁判長 「政治とカネ」に関して、国民の目が厳しいことは分かっていましたか。

 被告人 はい。

 裁判長 法に触れるかどうか、無関心な状態でなかったのですか。

 被告人 決して法を犯していいとは思っていませんが・・・

 裁判長 あなたの頭の中で考えていることはありますか。

 被告人 さまざまなことを考えていますが、組織のことでもあり、この場で言えることではありません。

 裁判長 直近6年分の帳簿が発見されていないことは事実ですか。帳簿は保管しなければならないのでないですか。

 被告人 詳しいことは分かりません。

 被告人質問の終了後、検察官は論告で「政治資金規正法の寄附の制限の趣旨に反した悪質な犯行。資金提供は長期にわたり、反復、継続され、組織としても積極的に再発防止に当たるとは考えにくい。事務所に保管されているはずの帳簿がなかったことには被告人も関与していると思われる。被告人は少なくとも3年間の公民権停止にするのが相当。北教組には罰金50万円、長田被告には禁固4カ月を求刑する」と述べた。

 北教組の主任弁護人は最終弁論で「選対の事務所を維持するだけでも毎月150万円掛かるが、必要な資金を用意しなければ、選挙では戦わずして負けてしまう状況だった。長田被告は北教組が2度と違法な政治資金の供与をしないことを決意している。適正な判決をされることを望む」と述べた。

 長田被告の主任弁護人は「一連の事実が広く報道され、長田被告は批判、非難の重大な社会的制裁を受けた。本件については罰金刑を選択することを求めます」と主張した。

 最後に長田被告は「私の誤った判断、違法行為による責任は極めて重い。早急に再発防止に取り組んでまいります」と謝罪した。公判は即日結審し、判決は6月14日に言い渡される。

 小林衆院議員の陣営をめぐっては、昨年の衆院選で公職選挙法違反(買収約束、事前運動)の罪に問われた連合北海道札幌地区連合会の元会長・山本廣和被告(61)の控訴審(1審判決懲役2年、執行猶予5年)が今月11日の初公判で結審し、6月1日に判決が言い渡される。木村被告の判決公判は6月9日。(文・東、写真・糸田)

 

小林千代美衆院議員

写真・山本廣和被告の有罪判決を受け、2月
12日の会見で陳謝した小林千代美衆院議員

 

 

北教組違法献金初公判 小林陣営会計責任者が起訴事実を認めて結審
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