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【環境を考える】

ハリヨの固有種、交雑で危機 滋賀・米原地蔵川

2010年5月15日

絶滅が危惧されるハリヨ

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 絶滅の恐れがある淡水魚のハリヨが、主な生息地である滋賀県米原市の地蔵川で、雑種化が進み、同川固有の純系の魚は絶滅状態であることが、岐阜経済大の森誠一教授(動物生態学)と福井県立大の小北智之講師(魚類進化生物学)らの共同研究で分かった。

 ハリヨはトゲウオ科の魚で全長5〜7センチ。滋賀県東部と岐阜県西部のわき水に生息する。環境省のレッドデータブックで絶滅危惧(きぐ)1A類とされ、両県では条例で採取が禁止されている。

 数百匹が生息していた地蔵川で、森教授らは2008年ごろからハリヨの外見の変化に注目。本来は5〜10枚のうろこが、同じトゲウオ科のイトヨの特徴を示す20〜30枚になっていた。昨年、許可を得て26匹を採取し、DNA調査したところ、ほぼすべての個体でイトヨと交雑していることが確認できたという。

 イトヨは北日本などに生息し本来は滋賀県内は生息域でないため、森教授は「何らかの形で人為的に入り込み交雑したとみられる」と指摘。「安易な放流で地域固有の貴重な生物が絶滅する可能性があると知ってほしい」と警鐘を鳴らしている。

 森教授らは、米原市内の同じ水系の河川で純系のハリヨを採取、系統保存のため県内の研究施設で飼育している。保護に取り組む住民団体「地蔵川とハリヨを守る会」の大橋邦男代表(67)は「県や森教授と協力して、ぜひハリヨを復活させたい」と話している。

 

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