米ゼネラル・モーターズ(GM)の1~3月期決算での黒字転換は、1台当たり2000ドル強(約19万円)のコスト削減や北米、新興国市場での成長がけん引した。ただ、独オペルを中心とした欧州部門は依然赤字が残り、独政府の公的支援も決まらないまま。北米での商品力強化も今後の課題だ。懸案の再上場を通じた「国有状態からの脱却」には、成長の持続性が問われる。
GMが1~3月期に計上した人件費や生産コストなどの総額は303億ドルだった。同期の総販売で割った1台当たりのコストは1万5200ドルと、前年同期より約2200ドル圧縮。損益分岐点が大幅に下がったことを意味する。
GMは2009年6月の法的整理に伴い、政府の強力な後押しでリストラを実施。09年3月末で5兆円を超えた負債の3分の1への削減や米約10工場の閉鎖、ブランド再編などを進めた。
こうした合理化効果に加え、世界的な新車市場の回復に伴う販売増が黒字化に寄与した。まず北米では1~3月の出荷台数が前年同期比で12%増加。日本車の台頭に伴う販売減と余剰生産能力で慢性的な赤字に苦しんでいたが、1~3月期は12億ドルの黒字(税引き前、利払い前)に転換した。
また新興国を中心とする国際事業(欧州以外の海外市場)は総販売が45%増の103万台と、これまで主力だった北米(56万台)の2倍近くを出荷した。損益面でも6割増の12億ドル弱の黒字で、「稼ぎ頭」に育ちつつある。
GMのクリス・リデル最高財務責任者(CFO)は17日、「黒字化はGMが成長基盤を確保する上で重要な一歩だ」とコメント。一方で地元メディアに対し「再上場へ向け、安定的に利益を出すことが次の目標だ」と語った。
GM株の約60%を保有する米政府はこのほど、複数の米金融機関と接触し新規株式公開(IPO)へ向けた準備を始めた。再上場には安定して利益を稼ぎ出せる体質を市場に示す必要があるが、課題は多い。
北米では、販売の伸びの大半がピックアップトラックなど大型車。米フォード・モーターが新型の中・小型車を相次ぎ投入するのに比べ、GMの中・小型車の顔ぶれは旧GM時代と変わらない。
1~3月期に5億ドル強の赤字が続いた欧州事業の再建協議も遅れている。GMの計画では独オペルと英ボクソールの再建費用計37億ユーロのうち、19億ユーロを自社負担。18億ユーロを公的支援に求める。3月上旬に英国政府が3億ユーロの債務保証の供与を決めたが、肝心のドイツは依然「お預け」状態。「経済危機は収束しつつあるのに、いつまで危機対応しなければいけないのか」。ブリューデレ独経済技術相はオペル支援に懐疑的な発言を続ける。
GMグループの中型車開発を担うオペルは14年までの5年間で新車開発に110億ユーロを投じ、電気自動車(EV)や低公害エンジンを強化する計画。公的支援が縮小となればグループ全体の開発戦略の修正も迫られる。
(ニューヨーク=小高航)
オペル、ゼネラル・モーターズ、GM、クリス・リデル、決算、CFO、フォード・モーター、金融機関、IPO、コスト、ボクソール、黒字転換、リストラ、赤字、総合力課題、再上場、ドイツ、米政府、ピックアップトラック、ブリューデレ、GM時代
日経平均(円) | 10,186.84 | -55.80 | 19日 大引 |
---|---|---|---|
NYダウ(ドル) | 10,510.95 | -114.88 | 18日 16:30 |
英FTSE100 | 5,197.70 | -109.64 | 19日 10:15 |
ドル/円 | 91.56 - .58 | -1.18円高 | 19日 18:09 |
ユーロ/円 | 111.56 - .62 | -3.29円高 | 19日 18:09 |
長期金利(%) | 1.285 | -0.010 | 19日 17:04 |
NY原油(ドル) | 69.41 | -0.67 | 18日 終値 |
経済や企業の最新ニュースのほか、大リーグやサッカーなどのスポーツニュースも満載
詳細ページへ
日経ニュースメール(無料)など、電子版ではさまざまなメールサービスを用意しています。
(詳細はこちら)