ロッテ−中日 2回表1死二塁、大島(左奥)の打球がファウルではないかと抗議し認められた中日・落合監督(右)(北田美和子撮影)
|
 |
落合監督の通算勝利が499で足踏みした。18日のロッテ戦(千葉)。先発の朝倉が3イニングでKO降板されたが、得意の継投で打線をその気にさせ、苦手の渡辺俊を攻略した。最後は主力が沈黙して交流戦連勝は4で止まったが、投打の信頼力でここから再ダッシュを。
猛烈な“逆風”がチームに吹いた。先発・朝倉がわずか3イニングで3点失ってマウンドから消えた。落合監督が開口一番、「いやあ、この球場は難しいなあ」と、苦笑を浮かべたほど強烈だった。
常時風速10メートル前後。いつにも増して吹き荒れた。それが飛球だけでなく、投手の球も変化させた。ロッテ選手は慣れていても、中日ナインには年に1度しか体験しない風なのだ。
早々と白旗を揚げたくなる逆境。それでも相手に食らいついた。看板の救援陣が耐える。つなぐ。1点差まで迫った後の7回裏、2死一塁で切り札・浅尾を投入。代打・サブローを遊ゴロにねじ伏せた。
ワンサイドになりそうだった試合を紙一重の競り合いに持ち込んだ。試合後、落合監督は「1点差でも10点差でも負けは負けだ。その点差や展開によって使うピッチャーが変わってくる」と、語った。ひと言で言えば負け。だが、執念を見せた。
浅尾が抑えた後の8回の攻撃、先頭・野本が二塁打で出塁。クリーンアップが凡退したが、一打同点にまで持ち込んだ。浅尾はその裏に1失点。「あそこで3人で終わっていれば、流れが変わっていたかもしれない」と自分を責めたものの、一度は風向きを変えた。
敗れたものの、逆境での強さは見せた。右脇腹を痛めている和田は7回、激走で反撃の起点となる内野安打を放った。
落合政権も7年目を迎え、監督通算勝利も節目の「500」にあと1勝と迫っている。逆境に耐えてきた強さ。その一つの表れがこの和田の内野安打だろう。
「ウチの連中、痛い、って言わないだろ。分かってるんだ。休んだら、それだけレギュラーを奪われるパーセンテージが上がるってことを」
絶対に譲らない。その気持ちが芯となり、たくましい集団になった。ちなみに現役時代の落合監督のエピソードは驚異的だ。こんな話を聞いた。
「肋骨(ろっこつ)は折れていても、やれるところだから。オレは3カ月かかった。寝られない、食べられない、セキできない、笑えない…。練習もできないから、その3カ月は成績が落ちたよ」。肋骨骨折を隠したまま3カ月間、打線の看板を守り続けたというのだ。
完敗の流れを、指揮官の采配(さいはい)とタフな選手たちの働きで一度は呼び戻した。マリンの風は19日もきっと吹く。「こんなものかと分かってくれたら、明日は多少は違うんじゃないか」。風は強くとも“向き”は変えた。 (生駒泰大)
この記事を印刷する