南仏で開催中の「第63回カンヌ国際映画祭」コンペティション部門に新作「アウトレイジ」(6月12日公開)で参加中の北野武監督(63)が現地時間17日、公式記者会見を行った。北野監督は今年3月に同国芸術文化勲章の最高章コマンドール章を授与しており、凱旋にカンヌが沸いた。
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バイオレンス映画で名をはせた北野監督が、「BROTHER」(01)以来となるヤクザ映画を手掛けたとあって各国記者たちの期待度は高い。それを示すかのように、会見も約150人の記者が詰めかけ、サイン攻めとなる一幕もあった。
だが周囲の熱気に反して、北野監督は淡々としたもの。「映画を作る時に映画祭を意識するか?」と問われると、「もしカンヌを意識して作るのなら、こんな酷い暴力映画は撮りません」と言い放ち、会場を沸かせると同時に、「菊次郎の夏」以来11年ぶり2度目となるコンペ参加のプレッシャーを自らはねのけた。
「アウトレイジ」は現代のヤクザ社会を舞台にした不条理劇で残忍な暴力描写が満載。北野監督自身「それなりにいろいろな問題を起こすと思う」と挑発的に語ったように、16日に行われたプレス試写でも拍手が起きる一方で、「なんでこんな暴力ばかりの映画を作るんだ」と嫌悪感を示す記者もおり、賛否を呼んでいる。
北野監督は「人と同じ暴力の使い方をするのが嫌で、思いついた殺害シーンのアイデアに合わせて台本を書いた」と説明。また影響を受けた作品を聞かれ「深作欣二監督の『仁義なき戦い』シリーズは好きだけど、手法としてはカメラを持って振り回したり、役者で空間を埋めるのも好きじゃない。“深作監督のような撮り方をしない”というのが、ある意味影響を受けたことかな」とヤクザ映画の金字塔と言われる「仁義‐」に勝負を挑んだことを告白し、自信のほどをのぞかせていた。
公式上映は現地時間17日夜(日本時間18日朝)。審査結果は23日(同24日未明)に発表される。