南仏で開催中の第63回カンヌ国際映画祭で17日深夜(日本時間18日朝)、主要賞を競うコンペティション部門に選ばれた北野武監督(63)の「アウトレイジ」(6月12日公開)が公式上映された。約2300人の会場は超満員となり、北野監督は観衆から約5分間のスタンディングオベーションを受けたが、「見事にお客をKOしたという感じ。本当は半分以上、途中で席を立ちたかっただろうけど、しびれて立てなかったんじゃないの」の言葉が当たっていたようで、現地プレスの評価は手厳しいものだった。
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映画祭期間中発行されるスクリーン誌の星取表の「アウトレイジ」は、この日まで上映された8本のコンペ作の中で最低の平均0・9点(最高は5点)。上映中に悲鳴が上がるほどの残虐な暴力シーンが続くバイオレンス映画に拒絶反応を示す人が多く、批評家9人のうち3人が採点すら拒否する「バッド」評価。一方で、米バラエティ誌は「なぜつべこべ言うんだ?ビジュアルが素晴らしいじゃないか」と擁護し、意見が真っ二つに割れている。
しかしこれらの反応も、北野監督にとっては想定内。上映後、会見を行った北野監督は「カンヌのコンペに選ばれるだけで栄誉なこと。しかも、よくぞこのバイオレンスを選んでくれた。感謝感激です」と満足げ。そのテンションが上がった勢いで、先のフランス芸術文化勲章コマンドール章授与に続き、カンヌ出品とフランスに愛される理由について問われると「ケチと人が悪いところが似ているから相性がいいのかな。コレ、フランス語に訳されたらマズイな(苦笑)」と毒ガスでフランスへ返礼した。
コンペティション部門の授賞結果は現地時間23日に判明するが、北野監督は仕事のため日本で結果を待つことになる。北野監督は「前回コンペ参加した『菊次郎の夏』の時、いくら会場でウケても何の賞ももらえないというのがずっとトラウマになっている。だから賞には何ら期待していない」とキッパリ。それでも十分、話題性を振りまき大物の存在感を見せつけていた。