「WBA世界Sフェザー級タイトルマッチ」(17日、さいたまCA)
新エースの誕生だ!!王者・内山高志(30)=ワタナベ=が、挑戦者アンヘル・グラナドス(35)=ベネズエラ=を6回TKOで下し初防衛に成功した。序盤から攻勢に出た内山は、6回に右クロス一発で相手を沈めた。今年1月のベルト奪取に続いての連続KOでデビュー15連勝。国内では3月から3つのタイトルが流出していたが、悪い流れを止めた。V2戦は、同級暫定王者ホルヘ・ソリス(メキシコ)との王座統一戦がほぼ確実で9月開催となる見込みだ。
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結末は突然訪れた。6回、内山の放った右クロスが挑戦者のアゴを直撃した。強烈な一撃に相手は前のめりにダウン。足元をふらつかせ何とか立ち上がったものの、レフェリーが試合続行不可能と判断しストップを宣告。右一発でベルトを堅守した。
身長で13センチ、リーチでは12センチもグラナドスが上回っていた。懐の深い相手に対し、ボディーでフェイントを入れ顔面にパンチを返した。「作戦通り。こんなに早い回で決まるとは思いませんでしたけど。6回のパンチは入った感触がありました」。頭脳的な作戦で体格のハンディを埋めた。
地元埼玉に眠る最愛の父・行男さん(享年58)に捧げる勝利だった。プロ3戦目直前の05年11月に父はがんのため亡くなった。息子がベルトを巻いた姿を見ずに逝った。世界王者としての自分を父に見てもらいたい。地元での防衛戦はそんな願いから実現した。
ベルトを取るよりも難しいといわれる初防衛。スパーリングの段階から難問を抱えていた。185センチと同じような長身の練習相手が見つからず、一回りも二回りも大きい重量級の選手と練習した。時には10キロ以上重い4階級上の選手と拳を合わせたこともあった。
ボクシング界全体の流れは悪かった。3月に亀田興毅(東日本協会)が王座を奪われ、4月には長谷川穂積(真正)、今月8日には名城信男(六島)が相次いで王座陥落。2カ月間で3人の世界王者がベルトを失う中、30歳の王者が悪い流れを断ち切ってみせた。
V2戦は同級暫定王者ホルヘ・ソリス(メキシコ)との王座統一戦が濃厚で9月にも開催する。「初めての世界戦よりプレッシャーはあった。勝ててホッとしてます。(次は)もっと強くなって世界的に認められたい。そのためにも強い相手とやりたい」。30歳の“救世主”が新たなエースとして日本ボクシング界をけん引する。