地元の畜産農家、そして対策に当たる現場担当者の気力・体力は限界に近づいている。「感染している、いないにかかわらず、農家は精神的に参っている。すぐにでもカウンセリングが必要」と、JA尾鈴の小山課長は訴える。
小山課長は毎日、地元農家への連絡を欠かさない。携帯電話の電池はすぐになくなり、1日4回以上、充電を繰り返している。農家の不安を少しでも取り除きたいという一心からだ。
「今は隣の町にうつさないように、気持ちを込めて消毒している」
JA宮崎中央会の試算では、5月15日の時点で被害総額は160億円に上る。だが、その後も感染した家畜は増え続けている。地元の商店や飲食店、流通業などへの波及を考えると、被害はさらに深刻だ。
宮崎県は、養豚の飼育数で全国2位、肉用牛で3位。農業産出額3246億円(2008年)の約6割を畜産が占める「畜産王国」だ。感染がさらに広がれば、国内の食料問題に波及するのは必至だろう。
「川南はもう死んだ。今は隣の町にうつさないように、気持ちを込めて消毒している」。JA尾鈴の松浦部長は取材の終わりにぽつりと言った。
非常事態宣言が発令された現状、何よりも優先されることは感染拡大を止めること。ただ、現場の声を聞く限り、初動の甘さは否めない。この悲劇を教訓にしなければ、川南は浮かばれない。
1ページ写真キャプション、およびその2段落下、「黒木敏勝氏」は「黒木俊勝氏」の誤りでした。お詫びして訂正します。本文は修正済みです [2010/05/19 12:20]