沖縄県の米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設問題で、鳩山政権が同県名護市の辺野古沿岸部に検討している「くい打ち桟橋方式」と並行して、周辺環境への影響を最小限にとどめた形での埋め立ても検討していることが明らかになった。
ただ、鳩山由紀夫首相が決着期限としている5月末までに米側と具体的な工法については合意できない見込みで、6月以降も米側と調整を続ける方針だ。
現行案の埋め立ては、海砂などを使うことが想定されており、海の環境への悪影響が指摘されている。政権内で浮上している埋め立て案は、公共工事などで海に流れ込んだ赤土などがもとになったヘドロを掘り返して使う構想。周辺の海洋環境を再生するほか、埋め立て地内に水路を造り、サンゴ礁や藻場の定着などを促進して新たな生態系作りも視野に入れている。政府関係者によると、鳩山首相自身も関心を示しているという。
首相が移設問題の「5月末決着」を掲げていることから、日米は何らかの形で合意文書を作る方向で協議を進めている。政府高官は19日午前「具体的な工法は文書に盛り込まない方向だ」と語り、その後も調整が続く見通しだ。
辺野古沿岸部への移設案をめぐっては、鳩山首相が4月下旬、埋め立てを伴う現行案について「自然への冒涜(ぼうとく)」と厳しく批判。政権内では「環境に配慮した工法」として桟橋方式を軸に検討してきた。
だが、断続的に開かれている日米の外務・防衛の実務者協議で、米側は桟橋方式について、新たな環境影響評価(アセスメント)が必要になる可能性があり、移設が現行案より大幅に遅れる可能性があることや、構造上の弱点などから難色を示している。