黒煙上がるバンコク　占拠区域で銃撃戦

　タイ治安部隊は１９日早朝、タクシン元首相の支持団体「反独裁民主統一戦線（ＵＤＤ）」が占拠する都心のルンピニ公園に数千人規模の部隊と装甲車数十台を配備、強制排除に乗り出した。治安部隊とデモ隊の間で銃撃戦も始まった。病院当局者は地元テレビに対し、衝突で少なくとも１人が死亡、４人が負傷したと語った。

　治安部隊はデモ隊に対し、スピーカーで即時退去を要求。デモ隊が廃タイヤや竹やりを積み上げ築いたバリケードを壊して占拠区域内に突入し、催涙弾の発射も開始。同日午前にルンピニ公園をほぼ制圧した。ＵＤＤ幹部は軍の封鎖地区外で活動するデモ隊に「軍をできる限り攻撃しろ」と呼び掛けた。

　ＵＤＤのデモ拠点である都心の繁華街中心部には依然として女性や子供を含む数千人が残っており、突入すれば多数の犠牲者が出るのは必至。公園に突入した装甲車は、約２キロ先のデモ拠点のラチャプラソン交差点に向け数百メートル進み、包囲を狭めている。首相秘書官は地元テレビを通じ、デモ隊に投降を呼び掛け。政府報道担当者は、作戦の目的はデモ隊の封鎖強化だとして、１９日中、作戦を継続する方針を示した。

　ＵＤＤ幹部は徹底抗戦を呼び掛け、デモ隊は上空を旋回する軍のヘリコプターにロケット花火を打ち上げるなどして抵抗。ルンピニ公園近くの大通りでは廃タイヤを燃やし、黒煙が上がった。占拠区域の外側では、暴徒化したデモ隊が政府庁舎への放火や商店の略奪を始めた。

　バンコクの行政当局によると、治安部隊が占拠区域の封鎖作戦を始めた１３日夜以降、１９日までに死者は計４０人、負傷者は３１０人以上となった。政府はバンコクを２１日まで臨時休日にし、今週中の解決を目指す。

　デモ隊と治安部隊との衝突で、高架鉄道「スカイトレイン」や地下鉄が全面運行停止するなど都市機能がまひしている。（共同）

　［2010年5月19日12時23分］