タイの“銀座”　危険伴う鎮圧作戦

　タイ治安部隊が１９日、タクシン元首相派の強制排除に乗り出した舞台は首都バンコクのど真ん中、東京でいえば銀座に当たる繁華街だ。治安部隊にとっては障害があまりにも多く、鎮圧作戦の遂行には極めて大きな危険が伴う。専門家は「完全制圧を目指せば、デモ隊にも治安部隊にも多数の被害が出るのは必至」（バンコク駐在の外交軍事筋）とみている。

　日本時間１９日午前の時点で、治安部隊は反独裁民主統一戦線（ＵＤＤ）デモ隊が占拠する繁華街手前の公園を掃討している段階だが、繁華街の路上には高齢者や女性、子供を含む数千人が居座り続けている。

　道路沿いには、日本の伊勢丹などのデパートが入居するショッピングモール、欧米系の高級ホテル、日系企業多数がオフィスを構える日本の大手ゼネコンのビルなどが並ぶ。デモ隊にとっては「都会のジャングル」と一緒で、どこへでも逃げ込める。

　軍関係者によると、４月１０日の治安部隊とＵＤＤとの衝突の際、デモ隊の一部がイスラエル製の強力なサブマシンガン「ウジ」を含む軍所有の銃数百丁、実弾数千発を奪い、隠し持っているという。前回の衝突でも暗躍し、軍側に多くの被害を与えたＵＤＤの武装集団が本格的な市街戦を展開する恐れが強い。

　商業施設やホテル、オフィスの大半が既に休業しているが、一般市民や外国人が巻き込まれる危険性も残る。（共同）

　［2010年5月19日11時48分］