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口蹄疫 「わが子を殺され…」伝説の種牛育てた農家も悲鳴 

5月19日11時25分配信 産経新聞

口蹄疫 「わが子を殺され…」伝説の種牛育てた農家も悲鳴 
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21歳の誕生日を祝って、種牛「安平」のためにつくられたケーキ(県家畜改良事業団提供)(写真:産経新聞)
 殺処分の対象となる牛や豚が11万頭を超え、感染拡大が止まらない口蹄(こうてい)疫。非常事態宣言を出した宮崎県では白い防護服姿の担当者が消毒する姿があちらこちらで見られ、災害派遣の自衛隊車両が行き交うなど、東国原英夫知事が訴えたように「激甚災害」の様相を呈していた。4月20日に初確認されてから約1カ月。畜産農家は「もう手遅れ。廃業しかない」と悲痛な叫びを上げた。(天野健作)

  [グラフ]宮崎県が口蹄疫対策で殺処分対象とした牛豚の累積数

 ■ゴーストタウン

 被害の大半、約10万頭が殺処分の対象になっている川南町。畜産農場へ続く道が封鎖されているだけでなく、幹線道路でも検問所が設けられ、通行する車は消毒液の散布を受けなければならない。また石灰が大量にまかれているため、のどがいがらっぽくなる。

 「不要不急の外出は避けるように」との非常事態宣言が出た18日夕の地元商店街は人影がまばら。まるで「ゴーストタウン」のような静けさだった。電話取材に応じた養豚家の50代女性は約1千頭の豚を飼育。「子豚たちがどんどん死んでいく。鳴く声を聞いてられない。もうどうなるのだろうか」とうろたえる。殺処分の日程が決まらないため、「ウイルスを培養しているようなものだ」と嘆いた。

 ■全国に愛された伝説の種牛

 全国の畜産農家にとって最も痛手だったのが、22万頭の子牛を生み出した種牛「安平(やすひら)」を失ったこと。すでに現役を引退し、余生を過ごしていたが、先月12日の21歳の誕生日にはケーキまで用意して祝うほど愛されていた。

 安平を約1年間飼育していた宮崎市佐土原町の畜産農家、永野正純さん(61)は「あんな牛に巡り合えたのは幸せだった」と声を詰まらせる。殺処分については「自分の子供と同じだから…。それ以上言わなくても分かるでしょ?」と言葉少なだった。

 ■仕事といえど無念、国の対応遅い

 殺処分をする担当者もやり切れない思いだ。作業を終えて川南町役場戻った県の職員(50)は「きょうは300頭ぐらい殺した」と語った。この職員によると、殺処分は牛や豚の首にロープをかけて押さえ込んだ上で、獣医が首筋に静脈注射を打つ。約800キロの牛も1分間もすれば倒れ込むという。「いくら仕事といわれてもつらい…」。職員はつぶやいた。

 地元では国の対策の遅れへの非難が強い。新富町の土屋良文町長は18日、山田正彦農水副大臣らの役場訪問を受け「新富で感染を食い止めたい」と消毒の徹底を要望したが、「歯がゆい思い。国がもっと早く現場を見て行動してくれていたら」と記者に打ち明けた。

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最終更新:5月19日12時30分

産経新聞

 

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