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【今日の読み物(スコープなど)】

<スコープ>農相責任論 旗色悪く 政府、甘い危機管理

2010年5月19日 紙面から

 宮崎県の口蹄(こうてい)疫拡大で十八日、政府の対応遅れに対し、野党が赤松広隆農相の責任を追及するなど批判を強めた。赤松氏は初動に問題はなかったと反論したが、結果として感染拡大を防げなかったこともあり、政府は旗色が悪い。参院選を前に危機管理能力を問われる事態になっている。 (竹内洋一)

 自民党の谷垣禎一総裁は党口蹄疫対策本部で「政府の対応は極めて不十分だ。赤松農相は陣頭指揮を執るべき立場だが、連休中は外遊していた。この問題点をきちんと追及しないといけない」と攻撃ののろしを上げた。

 同党の大島理森幹事長は公明、共産両党の幹事長らと横路孝弘衆院議長に衆院予算委員会での集中審議の開催を申し入れ、口蹄疫への対応も追及する姿勢を示した。

 これに対し、赤松氏は記者会見で「反省、おわびするようなところはない」と強調。大型連休中の中南米訪問については参院農水委員会で「毎日(農水省の事務方と)連絡を取って対応していた。帰国するまでの段階では地域的な広がりはなかった」と釈明した。

 政府内には、宮崎県が三月末の段階で感染を見逃したことが拡大につながったとの見方がある。中井洽国家公安委員長は記者会見で「初動で口蹄疫ではないと認定してしまったことによる誤りだろう」と述べた。

 一方、枝野幸男行政刷新担当相は「この手の問題は当事者の皆さんから常に初動が遅いという批判を受けるものだ」と指摘。福島瑞穂消費者担当相も「ここまで広がってしまい、撲滅宣言をできないという点では十分反省する必要がある」と、対応の不備を認めた。

 ただ、現地の畜産農家にとっては、現時点の責任追及よりも感染拡大の防止が優先だ。政府は早期の沈静化のために一定区域内での全頭殺処分を検討している。この場合、殺処分を感染が疑われる家畜に限定する家畜伝染病予防法の改正か特別措置法の制定が必要になる可能性がある。

 立法を急ぐためには野党の協力が欠かせず、平野博文官房長官は記者会見で「与野党で理解をいただき早急に対応することもありうる」との認識を示した。谷垣氏も「与野党とも力を挙げて封じ込まないといけない」と述べ、追及一辺倒とはいかない事情をにじませた。

 

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