国道10号に設けられた消毒ポイント。消毒液を染み込ませたマットが敷かれ、口蹄疫被害の集中する川南町から南下する自動車のタイヤを消毒する=宮崎県高鍋町
観光客の靴底を消毒するマットが敷かれた九重“夢”大吊橋=18日午後1時、大分県九重町
宮崎県を襲う口蹄疫は、「畜産王国」九州を震え上がらせている。
大分県は、宮崎県に接する竹田市にある県農林水産研究指導センターが保管する「豊後牛」などの精液1万2千本を、大分市の大分家畜保健衛生所に移動した。凍結保存する精液の約10%にあたる。被害が広がってセンター一帯が移動禁止区域になれば、種付けができなくなるからだ。
豊後牛は「和牛のオリンピック」とも言われる5年に1度の全国和牛能力共進会で、2002年にグランプリを受賞したブランド牛だ。種付けができるかどうかは畜産業にとって影響が大きい。種牛や種牛候補牛の移動も想定しており、候補地を探しているという。
鹿児島県でも、宮崎県境の曽於(そお)市周辺で口蹄疫が発生した場合に「鹿児島黒牛」の種牛を避難させようと検討している。こちらも、日本一の和牛生産地として知られる鹿児島県が誇るブランド牛だ。
影響は三重県の「松阪牛」にも及ぶ。松阪牛の4割超は宮崎県から子牛を仕入れて肥育しており、関係者からは「子牛の調達が出来なくなるかも」と心配する声があがる。
ウイルスがばらまかれるのを防ぐための消毒作業も、地域や対象を広げている。
鹿児島県は18日、宮崎県境を中心とする13カ所で、口蹄疫ウイルスの拡散防止のために一般車両も消毒すると発表した。道路上に消毒薬を含ませたマットを敷き、その上を通過させる。これまでは畜産関係車両だけだったが、「畜産関係以外の人や車の動きがウイルスを広めている可能性もある」と踏み切った。早ければ19日から始める予定だ。