宮崎県で口蹄疫感染の疑われる牛が確認されるまで何があったのか。関係者の話から再現する。
宮崎県都農(つの)町。3月下旬、ある農場で水牛が下痢になった。モッツァレラチーズを作るために飼われていた42頭のうちの1頭。往診した獣医師は、31日に県の宮崎家畜保健衛生所に届け出た。
県も立ち入り検査したが、口蹄疫にみられる口の中や蹄(ひづめ)の水疱(すいほう)、よだれがない。便なども検査したが、下痢の原因となる菌やウイルスが見つからず、結論が出ないまま下痢は治まった。
これが最初の異変だった。
この農場から南に約600メートル離れた別の農家で、次の異変が起きた。
「口の中に軽い潰瘍(かいよう)のある牛がいる」。4月9日、衛生所に別の獣医師から連絡があった。2日前に往診したところ、1頭の牛が前夜から発熱し食欲がなく、口からわずかによだれがあったのだという。
県の口蹄疫防疫マニュアルでは「(口の中の)水疱は発病後6〜8時間以内に現れ、通常24時間以内に破裂する」と記載されている。
9日の往診で、口の中に直径3ミリほどの潰瘍は見つかった。しかし水疱ではなく、かさぶたのような状態。すでに発熱から4日がたつ。仮に口蹄疫なら、水疱や激しいよだれが見られるはずだ。
獣医師から相談を受けた衛生所は農場内のすべての牛を調べたが、口蹄疫の可能性は低いと判断した。発熱は1日でおさまっていた。
口蹄疫ウイルスの潜伏期間は、牛の場合で約1週間。獣医師は12日まで毎日往診したが、異常のある牛は見つからなかった。