「Liquidity」は改善しても「Solvency」は回復しない。最近欧州のソブリン債務についてよく言われることだ。EU,ECBやIMFが総力を挙げた救済策の発表により先週から相場はかなり落ち着いてはいるものの、それは問題国にとって債務の借り換えに何とかめどがついたと言うことでありあるいはそれらの債券を売りたい人がなんとかかんとか売れるということであり、あるいは資金繰りに困った銀行が何とかかんとか調達できているという流動性(Liquidity)が何とかなっていることでしかないのであって、中長期的にそれらの問題国がお金を返していけるかどうかすなわち支払い能力(Solvency)の問題がまったく片付いていないことに改めて気づかされる。そしてこの問題を顕在化させたくなければ、ECBが流動性を供給し続け国債の買取を続けなければならなくなっている。 人体にたとえれば、ECBは今回、飲みすぎた人の肝臓のような役割を果たすことになる。いまはふらふらしているけれど、肝臓がしっかり毒素(周辺国債券)を吸収しアセトアルデヒドと水(ECBクレジット)に分解してくれる。見た目はとりあえずそれでOKで、しばらくしたらまた普通に働けるかもしれない。ついでに点滴(流動性)を大量に入れて、体液の流れを良くし分解を早めているから、見た目(株価など)は元気になるかもしれない。 しかし本来肝臓の処理能力には限界がある。長年多量に飲み続けていればいずれ肝硬変などの重病にかかり、死にいたる病となる。今の状況は、たまたま急性アルコール中毒で運ばれてようやくみんながユーロ氏の飲みすぎに気づいたような感じだ。そして周りの人々が「飲みすぎたユーロ氏」を指差して、「どうもあの人大酒のみでやばいらしいわよ」と噂し始め、職場の評価も落ちてしまった。ちょっと前までは現社長のアメリカさんに代わって次期社長との呼び声もあったのに、「あの体じゃもう無理ね。早く引退してくれないかしら」みたいないわれ方で閑職に飛ばされそうな、そんな感じなのだ。職を失うかもしれないと知れ渡ったら最後、金を貸していた人たちがうぁーっとよってきてむしりとってしまう、そんな危険がある。 治療としてまずはアルコール(財政赤字)を抜かなければならないのはもちろんだが、急に抜くと禁断症状で大暴れしかねないから、徐々に抜いていく。つまり当面はアルコールを飲み続けることになり、肝臓への負担は慢性的なものとなる。禁断症状を出さずにアルコールを減らし続ける緩やかな治療過程で、肝臓がいつまで持つか、という勝負になってくるのだろう。 当面ユーロ氏の顔色が土色になってしまうのは、まあ致し方ないところだろうと思う。でも本当に医者の言いつけを守れるのかどうか、みんな見ている。きっとそのうち「断酒の誓い」とかやるんだろうけれど、それが守れないこともみんな見通してしまっているところが結構痛い。結局慢性肝臓病という重いものを背負うユーロ氏が完全な健康体になるには時間がかかるはずだ。まあ当面体は動くようだから、顔いろなどまじまじと見ないで一緒に働いてなかよくやっていれば、そのうちみんな持病のことなど忘れてくれるかもしれない。実はそれが一番平和だったりする。 |
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「ユーロ氏の肝臓病」について
「ユーロ氏の肝臓病」に 厭債害債さんの書かれている「ユーロ氏の肝臓病」というのはうまいたとえだと思います。 ...続きを見る |
労働、社会問題 2010/05/14 21:18 |
内 容 | ニックネーム/日時 |
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さしずめ日本は・・・ |
348ts 2010/05/14 19:46 |
確かに小生含め酒飲みは、急性アルコール中毒で生死の境を見た人以外は、少し肝臓に関する数値が、悪くても「γGTPが結構高くてさー」といいながら居酒屋でそれを話題に飲んでます。 |
karu 2010/05/15 20:55 |
アルコールと肝臓の関係かあ・・・ |
40歳無職 2010/05/16 07:22 |
348tsさんどうもです。日本はまだ肝臓にあたる日銀が痛めつけられてはいないのでその意味においては余裕があるでしょう。ECBはどんどん「肥大」してしまう可能性がありますので、必要性と歯止めのさじ加減が非常に困難になってきています。 |
厭債害債 2010/05/17 06:07 |
厭債害債さん |
348ts 2010/05/17 14:30 |
ありがとうございます。これって、ある日突然地方債がなんも保障もないということに気がついて、財政再建団体みやいな、Oさか市債とかがだれも持たないようになったしますことと一緒ですかね。なんか政府保証債がいいか、財投債がいいかみたい議論があったのでが、ギリシャは債券も発行したこととないような、H街道の一地方自治体なので、いいかなみたい甘さがあったような。しかしこれが、エスパイアに行くとリアルマドリードが何で金持ちなのかよくわかりませんが、これがいわゆるアングララテン経済の強さでしょうか。 |
karu 2010/05/18 23:21 |
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