■柳沢 普天間問題を考える時に、白紙的に言えば三つのアプローチがある。一つは、従来の政権がやってきたことだが、とにかく普天間の危険を除去しなければいかんということで、背景にある戦略的な状況などはとりあえず考えずに、できるだけ移しやすいところに移すという発想があると思う。ただ、その考えに立ってことさら場所を変えるとすれば、それは危険除去の観点でよりすぐれた案である必要があるだろう。それは何かというと、地元の受け入れがもっとスムーズに行くとか、期間が短くて済むだか、そういう案なら、白紙的にはあり得る。それから二つ目に、総理も昨年末言及した、抑止力という観点で、これは場所の問題というよりは、そもそも海兵隊がいなければいけないものなのかをいっぺん議論してみようと。
もう一つは、総理が年明けになって、「抑止力」というキーワードではなくて、「安全保障の観点で」という言葉を使うようになったのを聞いて、面白いと思ったんですけれども、抑止力というよりもう少し幅広く、グローバルな安全保障面における、日米の同盟協力という観点で、海兵隊というものがグローバルな秩序維持の役割を果たすので、その支えとして、同盟協力の一環として、基地の提供をするという発想が一つあり得るだろうと。ただ、そうであるとすると、従来からインド洋の給油もやってきたし、イラクにも自衛隊を出してきたし、では、どこまで日本として米国に協力していくのか。従来は基地の提供だけだったのですが、同盟協力というのは。さらに加えて、自衛隊をどこまで使っていくのかと、そういう全体像をやはり議論しないと、なかなかコンセンサスまで行きつかない。
それから、もう一つ言えば、民主党政権は、日本は米国の提供する国際秩序、これに乗っていて、それを必要だと思っていると思うのですが、民主党はイラク戦争に反対していたわけだから、では、米国の提供する国際秩序というものをどう規定するかをはっきりさせなければならない。もっとも、そういう理由で、地元の受け入れがしやすいかどうか、というのはまた別問題ですが。
そこで、抑止力という観点ですが、これは普天間の移設をうまくやるためでもなければ、移設を邪魔するためでもなくて、まさにイラク派遣が終わって、ポストイラクという状況にある。また、そもそも96年の橋本内閣の普天間返還合意から相当時間がたって、戦略環境も随分と変わってきているはずなので、そこはぜひ、普天間があろうがなかろうが、しっかり議論しなければならないと思います。
2010年4月5日