弁理士の日々

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堀江貴文「徹底抗戦」

2009-05-19 21:42:30 | 歴史・社会
元ライブドアの堀江貴文氏は、証取法違反(風説の流布、偽計取引)容疑で東京地検特捜部に2006年1月23日に逮捕され、4月27日までの長期にわたって拘留されていました。
堀江氏の逮捕・長期拘留は、外務省の佐藤優氏の逮捕・長期拘留を思い起こさせるものです。佐藤氏の長期拘留については、自書「国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて (新潮文庫)」でその全容を知ることができました。

堀江氏の状況についても、いずれ本人の著書を読むことができるだろうと期待していたので、以下の本をさっそく購入して読んでみました。
徹底抗戦
堀江 貴文
集英社

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もちろん堀江氏の主張では、当時も現在も、法を犯した自覚はないし犯していないと信じています。その堀江氏の主張の妥当性については、本人の主張を聞くだけでは判断することはできませんが、今後の推移を観察する上において、堀江氏の言い分を聞いておくことは意味があります。
堀江氏自身、拘留中は情報に接していないわけで、どこで誰がどのような行動や発言をしていたのか、堀江氏には全体像が把握できていません。従って、“自分が知っている範囲ではこういうことである。それ以上のことについては、実はオレ自身もよくわからない”と述べるに止まっています。そこを、自分の都合いいように脚色して執筆していない点は正直ではありますが、読者にとっては“結局どういうことなのか、よくわからない”という読後感が残ることになります。

ライブドアという“生きた会社”に強制捜査に入り、それも金曜ではなく月曜に入ったために市場が大混乱を来して投げ売りが続出します。東京地検特捜部はなぜこのようなタイミングで強制捜査を行い、株価暴落により一般投資家を巻き添えにしたのか。そのために堀江氏は株主代表訴訟を受ける立場にもなってしまいます。潔白を信じる堀江氏からしたら、株の価値を下げた責任は堀江氏にあるのではなく、このような捜査を行った特捜にあるということになります。

堀江氏は知人から、堀江氏はフジテレビの乗っ取りを企てた仕手戦の株屋と同じ人間と認識されていて、怪しげな人物と当局は考えているのだと知らされます。堀江氏にしてみれば、乗っ取り云々はどうでもよく、日本発の世界的メディアコングロマリットを形成し、ニューズ・コーポレーションやグーグルなどという世界のメディアと対等に渡り合える企業体を作りたかっただけなのです。当時われわれが堀江氏を評価していたほどの深謀遠慮があったわけではなさそうです。

堀江氏と共に逮捕された宮内亮治氏らは、堀江氏があたかも事件を主導していたかのような供述調書にサインしていました。宮内氏は後で露見する横領疑惑の方が心配だったのだろうと堀江氏は推測します。
「宮内調書に出てくる私の考えや行動に対する罵詈雑言の数々は、怒りを増幅させるものであったが、私の弁護を担当する高井康行弁護士が発見した彼の横領疑惑では、怒りを通り越して呆れるというか、かわいそうだなとさえ思った。」

拘留中の検察による取り調べでは、堀江氏が知らないことについてばかり訊かれます。ライブドア経営の実態において、宮内氏に任せっきりにしていた部分が多かったのでしょう。堀江氏は「知らない」としか答えられず、検察が望む方向で罪を認めることをしません。
しかし拘留が長引き、さらに長期にわたる可能性が出てきた時点で、「事実は分からないが、保釈を勝ち取るため、経営トップとして罪を認めても構わない」という調書にサインしそうになります。しかし堀江氏はすんでのところでふみとどまります。結局堀江氏は茨の道を歩むことになりました。

堀江氏の弁護チームは、早期保釈を勝ち取るため、2005年に導入が決まった公判前整理手続という手法を適用します。それが功を奏し、裁判所はとうとう堀江氏の保釈を認めました。

堀江氏の弁護は、元特捜検事の高井康行弁護士とそのチームが担当します。地裁では無罪あるいは悪くても執行猶予と予想しましたが結果は実刑判決でした。控訴審も高井弁護士が担当し、やはり実刑判決でした。
控訴審の頃、三浦和義氏がご自身の弁護士である弘中惇一郎弁護士を堀江氏に紹介します。ヤメ検ではないのに刑事事件を担当し、ロス疑惑の公判で三浦被告の無罪を勝ち取りました。上告審では、この弘中弁護士が担当することになりました。
だが「高井氏のようなヤメ検弁護士でなくなった以上は、今まで以上に生活に気をつけるように」と言われたそうです。堀江氏はまた司法の闇を感じます。

早期保釈のために用いた公判前整理手続は、高井弁護士がその制度制定にもかかわったそうです。宮内氏の横領事件を見つけ出したのも高井弁護士であり、元特捜検事の能力を感じます。一方で高井弁護士は、地裁と控訴審で堀江氏の執行猶予判決を得ることには失敗しました。
弘中弁護士による上告審の結果はどう出るでしょうか。
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