きょうの社説 2010年5月19日

◎百万石まつり 「チーム加賀藩」を広めたい
 6月5日に行われる金沢百万石まつりの百万石行列に高岡七夕大使の室谷美奈実さんが 参加し、加賀藩前田家2代利長の正室永姫役を務める。高岡が開町400年の節目を迎えた昨年も2人の観光大使が行列に加わっており、2年続けて高岡の「姫君」が、初夏の城下町を彩るまつりに華を添えることになる。

 百万石まつりは、1583年6月に加賀藩祖前田利家が金沢に入城したことにちなんで 続けられている行事である。利家の金沢入りは、城下町・金沢にとっても、加賀藩全体にとってもスタート地点と言ってよく、加賀藩の統治下で発展した歴史を共有する高岡がまつりで一役買うことについて、違和感を覚える金沢市民は少ないだろう。まつりを盛り上げ、「チーム加賀藩」の発想を広めるためにも、百万石行列の「高岡枠」を定着させたい。

 昨年、高岡から参加した2人の観光大使は、利家の3女の摩阿姫と4女の豪姫にふんし た。両者は大河ドラマ「利家とまつ」などにも登場しており、知名度の点では申し分がないが、今年の室谷さんが演じる永姫は高岡に住んだことがあり、高岡市民にとっては両者以上になじみがある女性だ。来年以降、この永姫役を「高岡枠」とするのも一案だろう。

 もちろん、これとは逆に、高岡のイベントに対して金沢が協力する場面も、もっとあっ ていい。昨年秋の高岡開町まつりには、金沢の金沢能楽会と東蚊爪町奴保存会が参加したが、こうした流れを途切れさせてはならない。両都市の双方向交流をさらに深化させるために、高岡にも機会の提供を求めていきたい。

 また、今後は高岡以外の「加賀藩ゆかりの地」にも、より積極的に百万石まつりの門戸 を開くことを考えてもいいのではないか。石川、富山県内だけにこだわる必要はなく、たとえば、利家の出身地である名古屋市中川区や、利家の5男利孝が開いた七日市藩があった群馬県富岡市、加賀藩の江戸屋敷があった東京都板橋区などからも人を招き、加賀藩をキーワードとした交流の場としてまつりを活用するのも面白い。

◎特別会計見直し 国会審議の方法も再考を
 政府の行政刷新会議が特別会計の改革案をまとめた。「ゼロベースで見直し必要不可欠 なもの以外は廃止」という基本方針はもっともと言えるが、特会にはそれぞれの存在理由があり、自民党政権下で相当数が統廃合された特会改革をさらに進めるには、説得力のある説明と強い政治意思が必要である。今後の特会改革論議に当たっては、特会の事業や積立金の点検はもとより、特会予算の国会審議の在り方を考え直すことも求めておきたい。

 特会制度について、民主党はこれまで「省庁の隠れた財布」「巨額の無駄遣いの温床」 などと厳しく批判してきた。が、そうした批判は与野党にはね返ってくることを忘れてはなるまい。

 特会予算は内閣の予算編成権の下にあり、国会の審議と議決を経て成立する点では一般 会計予算と同じながら、与野党とも特会予算の審議はなおざりにしてきた。官僚の別財布というような言い方がなされるに至った責任の一端は、複雑な特会予算の編成を官僚にまかせ、チェック機能を十分に果たさずにきた国会自身にあることも否定できないのである。

 特会制度が国の財政状況を分かりにくくしていることは確かである。財政資金が足りな いと一般会計からの繰り入れや借り入れで補てんされ、余剰金ができても一般会計に返す必要はない。こうした仕組みの中で、不要不急の事業が自己増殖的に増えたという批判が特会になされてきた。

 このため、特会改革を推進する「行政改革推進法」が2006年に施行され、法施行当 時に31あった特会を11年度までに17に削減することになった。特会の数は今年度で18に減っており、ほぼ計画通りに進んでいる。それでも行政刷新会議が指摘するとおり、特会制度に対する国民の不信感が払しょくされたとは言い難い。

 財政を立て直すためには、さらなる特会改革が欠かせないが、国民の不信感をなくすに は、特会予算を集中的に審議する場や仕組みの整備など国会の改革と、予算を審議する与野党議員の姿勢自体を改める必要もあろう。