きょうのコラム「時鐘」 2010年5月19日

 物々しい防護服で口蹄疫(こうていえき)対策に走り回る姿が報じられている。いやでも1年前の大騒ぎを思い出す

あれも見えない敵、ウイルスとの闘いだった。集団感染で学校は休み、行楽地は閑古鳥。「マスク列島」という奇妙な光景と、ワクチンが足りぬという悲痛な大合唱の末、「新型」に振り回されたという後味の悪さを残して終息した

今度の大騒ぎは逆のようである。大したことはあるまい、という甘い予測が裏目に出た、と専門家は言う。インフルエンザで騒ぎ過ぎて痛い目にあった「教訓」が、今度は油断を招いたのか。皮肉にしか思えない騒ぎが、1年を経てまた起きた

新型インフルは、衆院選も直撃した。人を大勢集めてもいいのか、握手をしても大丈夫なのか。いま思えば、笑うしかない。政権交代の大合唱は、新型インフルに劣らぬ騒ぎだった。揚げ句、興奮からさめた後味の悪さが、急速に広がっている

熱しやすいが、さめるのも早い。決して自慢にはならぬ私たちの習性である。病んで殺される牛や豚たちが、あらためてそれを教えてくれる。熱するのか、さめるのか。今度は参院選が迫る。