宮崎県で家畜の伝染病の口蹄疫(こうていえき)が広がっている問題で、鳩山政権は18日、(1)発生地から半径10キロ以内のすべての家畜にワクチンを打った上で殺処分とする(2)発生地から半径10〜20キロの家畜をすべて政府が買い上げる――を柱とする対策を固め、地元自治体や農協などと調整に入った。
同県はこれまで、農林水産省の指針に従って、口蹄疫への感染や感染が疑われる家畜が確認された場合、同じ農場で飼われている牛や豚のすべてを殺処分としてきた。対象は18日夜の時点で約11万8千頭にのぼっている。10キロ圏を加えると、農水省の推計では、新たに牛4万頭、豚12万6千頭が殺処分の対象となる見通しだ。政府は市場価格の一定割合の手当金を畜産業者に支払う。
宮崎県はこれまで、農水省の指針に従って10キロ圏を「移動制限区域」として、家畜や、その死体の移動を禁じてきた。しかし今回の口蹄疫は感染力が強いため、政府は、この区域内の家畜をすべて殺処分して拡大を防ぐ必要があると判断した。一度に何千頭も殺処分することはできないため、あらかじめ対象の全家畜にワクチンを打ち、ウイルスの勢いを弱めた上で、順次処分する方針だ。ワクチンが使われるのは、国内の口蹄疫対策で初めての例となる。
さらに、家畜の移動を制限している発生地から10〜20キロの「搬出制限区域」では、全頭を食肉に加工した上で、政府が市場価格に準じる価格で買い上げる。肉は流通させず処分する見込みだ。
口蹄疫対策を検討するために農水省が設置した専門家らによる委員会も18日、ワクチンの使用を検討するべきだという見解で一致した。
今回の口蹄疫で殺処分対象となっている約11万8千頭のうち、処分が終わったのは約5万頭にとどまる。