桑田、田植えで収穫有り？　学業の次は田んぼで“実践偏”

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独特の指導者修業も実践あるのみ。かつて鍛え上げた腰を折り曲げて手植えする桑田氏

　前巨人監督の堀内恒夫氏、元巨人の中畑清氏ら球界ＯＢが夏の参院選出馬を表明する中、こちらも政界進出か、あるいはどこかの球団の監督の座狙いかと動向が注目されているのが、元巨人、前パイレーツの桑田真澄氏（４２）だ。３月には早大大学院スポーツ科学研究科を卒業し、人生の新たな一歩を踏み出すのに支障はなくなった。その桑田氏が１７日、福岡県内の水田で田植えを行った。えっ？　なぜ、いま田植えなの？！（宮脇広久）

　桑田氏は大まじめだった。在京テレビ局１社の取材クルーは駆けつけていたが、番組企画ではない。

　つてを頼って、知人の親類が所有する福岡県豊前市内の水田を探し当てた。Ｔシャツ、スパッツ姿にゴム製の田植えぐつをはき、水田のぬかるみに足を踏み入れる。２・５アール（２５０平方メートル）の田んぼに、２時間かけて素手で福岡県産のブランド米「夢つくし」の苗を植えた。最後は田植機にも乗り込み、所有者の高橋俊行さん（６１）から操作法を教わりながら田んぼを２往復した。

　もちろん、田植えは生まれて初めて。桑田氏が操作する田植機の通った跡は、苗の列が一部大きくスライド。それでも本人は超ご機嫌。田植え終了後、意を決した少年ファンが硬式球を手にサインを頼むと、「きょうは田植えをしに来たんだよ！　サインをしに来たんじゃないんだよ」と声を荒らげてみせ、「ウソウソ、びっくりした？　きみは野球をやってるの？」と笑わせ、にこやかにペンを走らせた。

　次にこの田んぼを訪れるのは秋の稲刈り期かと思いきや、「何を言ってるの。そんな“おいしいとこ取り”で済ませるわけないじゃない。１、２カ月に１度、稲の成長を見に来ますよ。自分のつくった米でご飯を炊いて、明太子とちりめんじゃこで食べたい」と入れ込んでいる。

　早大大学院修了時には「今年挑戦したいことはワインづくりと米づくり」とぶち上げ、「米づくりは人づくりに通じる」と指導者修業の一環と説明していた。

　実際に田植えを体験した感想は、「いわば確認作業です。想像通りワインを熟成するにも、稲を育てるにも、人を育成するにも手間がかかります。プロ入りを収穫とすれば、小学生時代は田に水を張った程度の段階。あまり早い時期に水をやり過ぎるのも良くない。しごきや練習量過多で体を壊したら元も子もないです」だった。

　桑田氏は大学院の修士論文作成にあたって、現役プロ野球選手２７０人にアンケート調査を行い、球界の持つ体罰、長すぎる練習時間、絶対服従といった悪しき伝統を批判し、野球道の再定義を提唱して最優秀論文賞も受賞。田植えには、その“実践編”の意味合いもあったというわけ。

　とにかく好奇心旺盛。現役時代、ランニング中も単語カードを手にするなどして英語を習得。下戸だったのにワインに凝るようになったのは、「赤ワインが悪玉コレステロールを退治すると聞いて、最初は薬だと思って鼻をつまみながら飲んだ」から。

　今後も米づくりだけではない。「日本酒や焼酎もつくってみたい」。桑田氏と日本酒といえば、宮坂醸造（長野県諏訪市）の「真澄」が有名。桑田氏自身も「『真澄』なら、僕が作らせてもらっても改めて名前を付ける必要がないね」とノリノリでラブコールだ。

　自らの現役時代の失敗、あるいは現役引退後に慣れない事業に手を出してせっかく築いた資産を台無しにする球界ＯＢが後を絶たないのに比べれば、健全な方向といえるかも。

　ただし、巨人の先輩にあたる堀内氏、中畑氏らの参院選出馬にも、「僕は野球中心でいきます。いつか現場に戻ってユニホームを着たい」と言い切る。この調子であれもこれもと手を出していてはユニホームを着る機会を逸してしまいそうなものだが、「２４時間野球をやるわけじゃないんだから」と、ユニホームを着てからも“兼業農家”は可能とみている。待っているファンは数多い。ホントにユニホームを着てくれるんでしょうね？！

　■そういえば…　現役バリバリの１９９０年代後半、記者は桑田氏に「引退したら、やはり監督をやってみたいですか？」と聞いたことがある。「みなさん（マスコミ）にたたかれるのはもう懲り懲り。僕はファーマー（農民？）になりたい。自然と一体になって生きていきたいんですよ」との返答には、当時はまさか本気とは思わず、滑り気味のジョークと受け取っていたが…。