県立五條病院(五條市、199床)、町立大淀病院(大淀町、275床)、国保吉野病院(吉野町、99床)の機能分担について考える「県・市町村サミット~南和の医療と福祉~」が17日、大淀町の町文化会館で開かれた。県や大淀町などが、3病院を南和地域の拠点病院と後方支援病院に再編する案を提示。五條市や吉野郡の11町村は今後、協議会を設立して検討することで合意した。今年度中に結論を出す方針で、公立病院の再編論議が加速しそうだ。【阿部亮介】
3病院は、いずれも急性期に対応する救急病院。県によると、08年の救急搬送受け入れ件数は3病院で計2095件で、04年より約550件減少。入院・外来患者数も約25%減った。医師・看護師不足も深刻化している。
このため、診療報酬が減少し、3病院の実質損失(赤字額、08年度)は約18億5500万円。運営する県や大淀・吉野両町が補てんしている。森下征夫・大淀町長は「赤字続きで危機的な状況。3病院は急性期対応で組み合わせが悪い」と話す。
こうした中、老朽化した町立大淀病院の建て替え構想が浮上。昨年11月、県、大淀・吉野両町が3病院を効率的に存続させるための研究会を立ち上げ、今年4月末に今回提示の再編案をまとめた。
それによると、3病院を南和地域拠点病院(1病院)と後方支援病院(2病院)に再編。拠点病院は200~300床規模で、小児を含む二次救急や災害医療、急性期医療などの機能を持たせる。後方支援病院は50~100床規模で、回復期や長期療養、緩和ケア、認知症などに対応するとした。3次救急など高度医療は、県立医大付属病院(橿原市)、へき地医療は各市町村の診療所と連携する。
サミットでは、この再編案に賛同する声が多く、大きな異論は出なかった。ただ、3病院を利用する近隣町村の多くは現在、財政負担がなく、「財政的な協力がどうなるか心配している」(水本実・東吉野村長)という声も上がった。
荒井正吾知事は「広域連合を設置し、国保南和病院のような形にすれば、県も支援できる。3病院とも国保にするか、1病院だけにするかは今後のデータをみて比較していきたい」と述べた。
毎日新聞 2010年5月18日 地方版