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米エリート層「WASP」の凋落

5月18日14時19分配信 ウォール・ストリート・ジャーナル

 最近のある朝、ニューヨークのリンクス・クラブでは白髪の小グループが朝食を取っていた。ポーチドエッグやトーストを食べながらの話題は欧州であり、国債市場だった。静かに取引の交渉をする人たちもいた。40代か50代の人もいたが、ほとんどは高齢者だった。

 中南米やアジアの人もいるこのグループは明らかに上流階級のものだったが、仕事の話しが禁止され、プロテスタントのエリートがゴルフのスコアや別荘の話しをしていた20年前のクラブとはかけ離れている。ある元会員は「時間とともに変化してきた」とし、「それはプラスでもありマイナスでもある」と述べた。

 米国のプロテスタント・エスタブリッシュメントの長期的な落ち目にはいくつかの重要な節目がある。プロテスタント系のハーバード大学の戦後の門戸開放、1980年代の企業国家米国(コーポレート・アメリカ)での多様な役員構成、最初のアフリカ系米国人大統領としてのバラク・オバマ氏の就任などだ。

 歴史はもう一つの節目を見せてくれるかもしれない。ケーガン氏の最高裁判事指名だ。これが承認されると、9人の連邦最高裁判事はカトリックかユダヤ教徒で、初めてプロテスタントはゼロとなる。(ケーガン氏はユダヤ教徒)

 これまでの111人の最高裁判事のうち35人はエピスコパリアン(米国聖公会会員)で、最大の宗教グループとなる。最初の非プロテスタント判事はジャクソン大統領(第7代大統領)が1836年に指名したロジャー・タニー氏だった。

 最高裁判事の宗教別構成が今日の法曹界で問題になるかどうかは熱い議論のテーマになっている。しかし、プロテスタント・ゼロの最高裁をもたらすことによって、ケーガン氏は米国の政治、富、それに文化を米歴史の相当な部分にわたって支配してきた一派の最後の痕跡が一部消えるのを手助けすることになる。

 ノートルダム大学の社会学准教授のデービッド・キャンベル氏は「最高裁判事にプロテスタントがいなくなるという事実は、彼女の指名がWASP(アングロサクソン系プロテスタント)エスタブリッシュメントが米国で凋落(ちょうらく)していることを完璧に反映しているという事実ほど重要ではないかもしれない」と述べた。

 時間の経過から見ると変化は驚くほどだ。E・ディグビー・バルツェルの1964年の有名な著書「プロテスタント・エスタブリッシュメント」によると、60年代の大半の米企業の経営者はプロテスタントだった。

 米調査機関ピュー・フォーラムによれば、連邦議員のうちプロテスタントの比率は61年には74%だったが、現在は55%にまで低下した。一時ロックフェラー家やベーカー家が支配していた大手銀行の役員には、最近ではインド系米国人やギリシャ移民の孫もいる。

 ピュー・リサーチの調査によれば、10万ドル(約920万円)以上の年収があるプロテスタントはわずか21%で、ユダヤ教徒の46%、ヒンズー教徒の42%を大きく下回っている。

 新しい富が米国のエリートの民主化を始めた80年代までは、米国での権力と地位への道はまっすぐで狭かった。それは通常、グリニッチやボストン、ニューヨーク、あるいはフィラデルフィアのぜいたくな住まいで保守的な家庭の中で始まり、ニューイングランドの寄宿学校からハーバードやエール大学に行き、北東部の弁護士事務所や銀行に勤め、あるいはワシントンへの道を歩むことだった。

 プロテスタントの凋落の原因は市場の規制緩和、グローバリゼーション、テクノロジーの発展、教育、さらに家族などを通じた人脈よりも実力の重視など多くのことが考えられる。

 しかし、多くの人が指摘するのが、信仰そのもののダイナミクスの変化で、プロテスタンティズムはここ何十年か、より激しい信仰を特徴とする福音主義にくじけてしまったというのだ。通常エスタブリッシュメントの教会と目される聖公会派教会は、過去数年間顕著な信者減少を記録してるという。

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最終更新:5月18日14時19分

ウォール・ストリート・ジャーナル

 

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